ドラゴンクエスト4のクリフト×アリーナ(クリアリ)を中心とした二次創作サイトです。

saintheim はじめに…はじめて訪問された方は御一読下さい。



saintheim News 

何時も御覧下さり、有難う御座います。


■新着エントリー
  →これより以前のお話は「過去の更新情報08年~18年~)」内に掲載しております。

 ・06-29  ※徒然vol.219
 ・07-02  ※見えそうで、見えない答え。
 ・07-09  ※最後の定期船
 ・07-13  ※ずっと昔から。 アリーナ編その1
 ・07-16  ※ずっと昔から。 アリーナ編その2

■04/13、スピンオフ長編「Träumerei」、カテゴリ「スピンオフ」内にて連載開始しました。
■06/26、中編「教父VS貴族院長」、カテゴリ「父と母の祈念」内にて完結しました。
■06/29、「徒然vol.219」UPしました(バックナンバーは→コチラです)。

■02/09、2017年4月~のコメント返しを(それ以前はコチラより)させて戴いております。


saintheim Novel…長編・中編・短編等。

《 Long Piece 》…本編。クリアリ中心の長編物語。

《 Short Story & Short Novel 》…本編に添った、時系列毎の中編&短編集。

《 Spin-off 》…本編に登場する脇役を主人公とした物語。

《 Extra 》…本編とは違う設定のクリアリ長編&中編&短編集。

《 Project 》…他サイトの管理人様と企画して行った、コラボ作品。


saintheim Baton …フリーバトンや相互サイト様から回ってきたバトンに答えています。
 

saintheim Others …ドラクエ4以外のお話。
 

saintheim A play diary …DS版・ドラクエ4の攻略日記。


saintheim Illustration collection …イラスト。偶にフリイラも配布中。


saintheim Presents …個人的に戴いた物(フリイラ含)、差し上げた物。
ずっと昔から。 アリーナ編その2
クリフトの部屋に向かうなら、この廊下の角を曲がらねばならない。
角を曲がろうとした時、アリーナは思わず息を止めた。
ばったり出会ったミネアは、ご機嫌な様子を見せている。
「…ミネアさん」
「あら、アリーナさん」
ミネアはにっこりと笑う。
「クリフトさんならまだ御自身のお部屋の辺りに居ると思うわよ?」
「……!!」
どうして知っているの?
クリフトはミネアさんと一緒だった…?
「…ミネアさん、さっき」
「ごめんなさい、少し急いでいるの」
意を決して尋ねようとしたアリーナを遮り、ミネアは手を振り駆けて行く。
その背を見送りながら、アリーナは溜息を吐いた。

クリフトの告白の相手はミネアだったのだろうか…?アリーナは眉を顰め、思案する。
可能性は高い、癒しの魔法を操るミネアはクリフトの纏う空気と良く似ている。

「…言わなくてもあなたは解っているんでしょう?」

クリフトの声が聞こえ、アリーナははっと我に返った。
慌てて角を戻り、身を隠す。
廊下を歩く、ぺヴァル。そして、マーニャと腕を組んだ状態のクリフトが続く。
クリフトは珍しくマーニャの腕を振り解く事無く歩いている。
「言わなきゃ解んない」
マーニャは妖しく微笑むとぐいと腕を引き、顔を寄せる。マーニャと目を合わせたクリフトは叫んだ。
「だから好きだとさっきから言っている!」
その声にアリーナは身を竦める。
相手はマーニャさん…?!
このままでは彼等と鉢合わせになると気付き、身を翻した。

「きゃー、格好良い!面と向かって『好きだ』なんて言われちゃった!」

マーニャのはしゃぐ声を背中で聞きながらアリーナは走った。

ミネアさんもマーニャさんも、タイプは違うが女性から見ても素敵な人達だ。
大好きな戦友だし、幸せになって欲しいと思う。
自身の部屋に駆け込んだアリーナは扉に背を預け、胸を押さえた。
なのに。
何方なのか確認し、祝福し、応援しようと思ったばかりなのに。
胸の中を暗い気持ちが渦巻く。
「…こんな自分、大嫌い」

…どの位時間が過ぎたのだろう?
扉に寄りかかるようにしてしゃがんでいたアリーナは、部屋の時計に目を向けた。
もう直ぐ夕食の時間だ。
クリフトと顔を合わせるのは辛いが、行かねばクリフトだけでなくブライにも心配を掛けてしまう。
アリーナは力無い所作で立ち上がった。


・・・「ずっと昔から。 アリーナ編その3」に続きます。

ずっと昔から。 アリーナ編その1
神学の課題を胸に抱えたサントハイムの世継ぎの姫君アリーナは、ほんの少し小走りで歩いていた。
此処は武器商人トルネコが私財を投じて作った船の中。船底近くの船室を繋ぐ廊下は狭いが、目を楽しませる趣味の良い壁紙や調度品はそれを決して不快にはさせない。
…大丈夫よね?
アリーナは分厚い課題を見下ろした。
今年度の神学の講義の総まとめであるこの課題は、クリフトが十歳の時、神官職の二級への昇級試験を受ける許可を得る為に取り組んだ課題と同じらしい。
、普通の神官ならば二十歳前で受けてもおかしくない課題らしく、幾らサントハイムの天才の異名を持つクリフトから指導を受けているとは言っても、神官でも無い十八の自分には充分に手強いものであった。
十歳の時のクリフトの頭脳にも全く及ばない自分だが、かなりの時間を費やした論文だ、きっと合格点に届いている…筈。
抱える腕に力を入れ、下唇を噛む。
きっと認めて貰える。
己の立場も弁えない愚かな王女も少しは心を入れ替え、変わろうとしているかと安心して貰える。
側で仕えるに足る王女であると思って貰える。

Tart 2 side.A

「……」
自然とアリーナの歩みが止まった。
「…無理よ」
少しも変わってはいないのだから。
ずっと昔から。今この瞬間も。
自分の心は彼に向いている。
臣下に対して過ぎた思いは持つなと戒めた彼は、それを疎ましく思っているに違いないのに。
クリフトの部屋の前に立ったアリーナは、小さく息を吐いた後、眉を寄せた。
「…誰か居る」
人の気配がする。恐らくは二人。一人はこの部屋の主人であるクリフトだろう、もう一人は…仲間の内の誰かに違いない。
内密な、大切な話をしているかも知れない。また後にした方が良いだろうか?
扉を叩くべきかどうか悩むアリーナの耳を思わぬ台詞が突き抜けた。

『ずっと昔から好きですよ。きっと他の皆さんよりも…、好きだ』

…嘘っ!!
どくんと心臓が大きく音を立てる。アリーナは震える膝を支えながら壁に手をついた。
何、今のは?!
今の声は間違いなくクリフト。
部屋の中に居る誰かに向かって言った、クリフトの先程の言葉は。
今の言葉は、告白…?
クリフトには、好きな人が居る…?!
逃げ出したい衝動に駆られたアリーナはくるりと背を向けた。

何故涙が出るのだろう?
悔しいような気持ちで胸が一杯になるのだろう?
自室に戻る廊下を足早に歩きながら、アリーナは目元に滲む涙を指の腹で拭う。
私はクリフトに愛してももらえないから?
私が愛するだけでもクリフトには迷惑だから?
誰か一人を愛する事など無いと言ったのは嘘で、裏切られたと感じたから?
「駄目よ…そんな気持ちを持ったら」
クリフトが側に居る価値のある王女になれれば、自分は満足では無かったのか?
愛する事も止められ無い、駄目な王女の癖に。
愛されたいと望むのか。
アリーナは袖で涙を拭いた後、小さく息を吐いた。
受け入れなければ。祝福しなければ。
クリフトに想う人が居るのなら、自分は主人として応援し、背中を押してやらねばならない。
アリーナは立ち止まる。
「相手は…誰だったのかしら?」
自分以外の女性は、二人。
モンバーバラの舞姫マーニャと占術師ミネア。
何方も素敵な、誰もが振り返る美女だ、クリフトが想いを寄せてもおかしくは無い。
ちゃんと相手を確かめておけば良かった。
これでは応援する事も出来ない。
アリーナは自身の愚かさに溜息を吐いた後、再びクリフトの部屋の方へと向かって歩き始めた。


・・・「ずっと昔から。 アリーナ編その2」に続きます。

最後の定期船
港町コナンベリーを出港した最後の船は、ソレッタ大陸の玄関口ミントスへと向かっている。
何とか乗船券を手に入れ、帰郷する多くのソレッタ人と共に船に乗り込んだサントハイムの姫君一行は、新たな地ソレッタでの活動計画を立てていた。丸い卓を囲み、ソレッタ大陸の地図を広げている。
「…先ずは此処、ソレッタ王国へ向かいましょう。正直を申しまして、この国とは国交らしき交流もありません。これまでの国と同様には行かぬと思っておいて下され」
「つまり、ソレッタ王の協力を期待するのは難しい…って事?」
「左様」
王女の理解にブライは頷いた。
サントハイムは農業国としての一面も持つ。ソレッタもまた同様であり、距離的にも両国は利害が一致しない為、正式な条約や国交等は無いと言っても過言では無い。
エンドールのように自分達の代わりに諜報活動をしてくれる事もブランカのように馬車を借りる事も期待してはならない。
「ソレッタには商人の町ミントス以外大きな町は御座いません、つまりミントスで成果が上がらなければソレッタでのそれ以上の収穫は見込めないという事。土地勘も機動力も無い私達だけでも難しくは無いかと」
クリフトの見解を聞いたアリーナはほっとした表情で頷いた。
「そっか。何とかなりそうね」
「勿論ソレッタ王と謁見する必要はあるでしょう、王のエスターク復活の予言やこの先入ってくるかもしれないサントハイム城の皆様の行方に関する情報の提供等、お知らせする事やお願いする事は御座います」
「うん、そうだね。……ソレッタ大陸、……広いわね」
アリーナは目の前に広がるソレッタの地図をじっと見つめる。国土の半分は砂漠とその浸食を阻むように切り立った山脈が占める。ソレッタとミントスを結ぶ街道はあるが、目ぼしい宿場町は殆どない。野宿は避けられないだろう。
「…ん、どうした?クリフト」
ブライの声でアリーナは顔を上げた。ブライは気遣わし気な様子でクリフトに手を伸ばす。
「…!」
顔が真っ青。アリーナの表情も強張った。珍しく汗も掻いている。座っているだけで、寧ろ、寒い、のに。
「大丈夫です。お手を煩わせる程の事では」
クリフトはブライの手を遮るように掌を突き出した。
「船酔いです、下を見ているとどうも気分が優れなくなります」
「……。そうか。この海峡は内海と外海を繋ぐ、その分潮の流れが早く、距離の割には進まぬ。大分流されるからのう。部屋に戻るが良い、クリフト。具体的な日程は儂とアリーナ様で詰めておく」
「申し訳ありません」
クリフトは会釈した後、卓に手を付いて立ち上がる。アリーナも慌てて立ち上がった。
「爺。私、クリフトを部屋まで送っていくわ、直ぐに戻るから」
「大丈夫です、一人でも…」
「そうして頂けると助かりますな」
直ぐに遠慮したクリフトの言葉が終らぬ内にブライはアリーナに許可を出す。
ブライはクリフトの体調が思わしく無い事を知らない。だが、感じ取っているのかも知れない。
これがただの船酔いでは無い事を。

last ship

「申し訳ありません、姫様。お手数をお掛けしまして」
クリフトは壁に手を付きながら歩いている。その手を横目にアリーナは頭を振った。
「心配するのは当然でしょ。あなたはどう思っているか知らないけど、私はあなたを大切な一番の友人だと思っているんだから」
「……有難う御座います」
微笑むクリフトに笑みを返した後、アリーナはクリフトの手にある船室の鍵に手をかけた。
「私が開けるわ」
声を掛けた後、アリーナは唇を引き結んだ。
恐ろしく冷たい指。昨日よりも酷いのではないだろうか?
ブライに触れられまいとしたのは、これが理由か。
ブライの手を煩わせたたくないという態を成していたが。
己の不調を悟られない為。
クリフトに宛がわれた船室の扉を開け、中に入るとそのまま崩れる様にクリフトは膝を付いた。
…身体は熱い、かなり熱が上がっているに違い無い。
アリーナは引き摺るようにしてクリフトを寝台へと連れ、横にする。
昨日、アリーナは様子のおかしいクリフトの不意を突く事で、クリフトの体調が優れない事を知った。だが、ブライには知らせないで欲しいと言う。
その願い通りブライには伝えていないのだが。
「……爺にも言っておいた方が良いわ」
アリーナはそっとクリフトの手を握る。
「爺は何も言わないけど…、心配してる。あなたはどう思っているか知らないけど、爺はあなたを本当の孫のように愛している」
「…ええ。解っています。解っているからこそ、言えません。…本当は貴女にも知られたくは無かった」
クリフトは空いている方の手で瞼を覆う。
冷たい手の重みがじんわりと熱を持った身体を癒す。
そう、貴女にも知られたくは無い。本当はもうどうしようもないほど身体が動かない事を。
クリフトは瞼の上の手を離し、アリーナに微笑んだ。
「…早く治さないといけませんね。昨日よりは食欲があるのです、ミントスに着く頃には元通りになりますよ」
勿論、嘘だ。食欲なんて随分前から無い、強引に食べているだけだ。
熱は全く引かない。最近は立っている事すら難しくなった。
平然とした表情で日々を過ごす事は限界が近い。
いや、それより、この旅を続ける事にも限界が近いのでは無いか、そんな不安ばかりが押し寄せる。
ミントスまで持たないかも知れない、この船旅が最後となるかも知れないと……。
「そう!良かった」
クリフトの嘘を信じるアリーナはぱっと明るい笑みを見せる。そして軽やかに立ち上がった。
「早く元気になってね、クリフト」
「…はい、くれぐれもブライ様には」
「解ってる!じゃあ、戻るわね、爺が心配し過ぎて怒りだしていたら大変だから」
部屋の外へ出て行くアリーナを見送った後、クリフトは苦笑交じりに呟いた。
「私も怒られてしまうかも知れないな。ブライ様と……姫様に」
私を大切に思い、心配してくれる二人は、きっと、病気が深刻な事を黙っていた私を怒るだろう。
だけど、私も二人が大切で、私などには勿体ない心配りなどして欲しくないから。
最後の最後まで、三人旅を続けたいから。
得意な嘘を吐き通す、限界の瞬間まで。
だけど、その瞬間が来た時の為に。
「言い訳を考えておかないといけないな」
呟き、瞳を閉じる。
そのままクリフトの心は睡魔が支配した。


end.

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見えそうで、見えない答え。
此処はブランカ。
中央大陸に存在する、天女伝説で有名な王国である。
サントハイム城で起きた神隠しの謎を追う為、サントハイムの世継ぎの姫君アリーナとその教育係で稀代の魔術師ブライ、そして、姫君の相談役であり幼馴染でもある神官クリフトは当ての無い旅を続けている。

answer.

これで爺に頼まれた買い物は全部済んだ筈。
もう直ぐこのブランカを発つ。サントハイムにその報告を兼ねて帰国中のブライに旅の準備を頼まれたアリーナは、ブライに託された準備リストを買い忘れは無いかともう一度上から確認した後、買い足した道具類を担ぎ直した。
今クリフトが買っている物で頼まれた品は揃う。向かいの道具屋で薬草を買い求めるクリフトに声を掛けようとしたアリーナはそのまま硬直した。
綺麗な女性。其れが第一印象。優しい瞳は微笑む男性に注がれている。
知らない女性だ。アリーナはきゅっと唇を引き結ぶ。緩やかに束ねた髪に飾られている生花が彼女の美しさを際立たせている。其の女性が親しげに声を掛けているクリフトもまた良く知った女性のようで、時折楽しそうに笑い声を上げながら話をしている。
どうしよう。アリーナは逃げ出したくなる衝動に駆られ、少し歩を進めたものの、此処から居なくなってはクリフトに心配を掛けてしまうと思い直し立ち止まる。
其の内、手を振りながら女性と別れたクリフトはアリーナが様子を伺っている事に気付くと顔を顰めた。
「声を掛けて下されば良かったのに」
少し苛ついた色を纏う声にアリーナもまた牙を向いた。
「…あの人、誰よ」
質問するアリーナからクリフトは顔を背ける。
「昔からの知り合いです」
「…ふうん、そうなの。随分と楽しそうだったわね」
棘のある言い方だと解っていたが、アリーナの口は勝手に言葉を紡ぐ。
「あなたの知り合いって事は、シスターか何か?」
「いいえ。サランに住む一般の方です。懇意にして頂いています」
…懇意にしている女性。つまりは、そういう事なのだろう。
「へえ、そうなんだ」
アリーナは震えそうになる声を叱咤しながら、クリフトに背を向けた。流石に表情は誤魔化せない、顔が引き攣っているのが自分でも判る。
「クリフトも隅に置けないわね。城に居た頃は浮いた噂を聞かなかったから、恋なんて無縁かと思っていたわ。彼女、綺麗だから気を付けなさいよ?」
「……」
クリフトは軽く王女の背を睨む。
「私の私生活等、貴女には関係無いでしょう?」
「!…ええ、そうね。関係無いわ!」
振り返り、アリーナは不機嫌そうなクリフトを睨み上げた。
「私とあなたは仕事上の付き合いだものね!」
苛々する。アリーナは怒りを逃すように大きく息を吐く。
クリフトだけでなくアリーナも道行く者達が何事かとこちらを伺う目線に気付いていたが、両者とも矛を収める気配は無い。
「…何です、その随分と棘のある言い方は。喧嘩なら受けて立ちますけど?」
人の気も知らないで。クリフトは苛立ちを纏った低い声を発しながら、腕組みをする。アリーナはふんと鼻を鳴らした。
「そっちが先に喧嘩を売って来たんじゃない」
「貴女が先でしょう!彼女の事を詮索した!」
あっそう。私には彼女の事は話したくないって事ね。アリーナは震える拳を握り締める。
「ええ、ええ、悪かったわね!クリフトに恋人が居るなんて知らなかったから!」
「なっ……」
何だと?…恋人?!…そんな存在等、居る筈がないだろう!私がずっと恋をしているのは貴女なのに!クリフトは心の中で喚いた後、出来る限り冷静に応じる。
「恋人ではありません。邪推は彼女に失礼です」
「ああ、そう!まだ恋人じゃなかったの!残念ね、それなら彼女と恋人になれるように私もお祈りしてあげるわ!」
お、お祈り?彼女と恋人になれるように?クリフトは顔を引き攣らせる。好きな女性にそんな事をされたくはない。
「そのような事はして戴かなくて結構です!もう良いでしょう、この話は」
クリフトは溜息と共に台詞を吐き出す。
「…貴女へ仕事以外の報告の義務は無い」
そう、義務も権利も、私には無い。
クリフトは帽子を目深に被り、だらりと下げているアリーナの手からブライのリストを取り上げた。
「……買い忘れは無いですよね?では一度宿へ戻り、荷物の整理を…」
「…クリフトって、何時もそうよね」
「え?」
クリフトはアリーナの方へと瞳を向ける。俯いている為、その表情を伺う事は出来ない。
「クリフトは何時だってそう!私が知りたい事は何も教えてくれない!!私は公務だろうと何だろうと何だってあなたに話しているのに!」
何でこんなに苛々しているのだろう?アリーナは涙声になっている自分に驚いていた。
互いの信頼の重さに隔たりがあると感じたから?それとも別の理由?
「姫様…」
何故アリーナが泣いているのか判らず、動揺した指を忙しなく組む。
「泣かずとも宜しいではありませんか……。貴女が知る必要の無い事ではありますが、命じて下されば、私だって…」
クリフトは瞳を揺らした後、ぽつぽつと話をし始める。
「その……、彼女はサランの道具屋のお嬢さんです。神学校に通っていた頃からの顔馴染みで…、古い友人の一人です。なので気さくに話が出来る女性でして」
…その道具屋の主人に彼女との縁談を持ち掛けられていた事は言わなくても良いよな。クリフトはちらりとアリーナの様子を盗み見る。アリーナは何かを考える素振りを見せた後、クリフトを見上げた。
「私だって古い友人の一人でしょ」
「ええ、まあ…」
友人と言い切るのは難しいとは思うが。クリフトは曖昧に頷く。
「クリフトは私とはあんな風に笑ったり話をしたりしない」
「……貴女は彼女とは違います」
アリーナはかっと瞳を見開いた。
「何が違うのよ?!私だってクリフトの友人で…」
同じ、女の子なのに。アリーナはぐっと口を閉ざす。
「私の認識の問題です。貴女は高貴な方です、それに…」
「もう、良いわ」
これ以上聞いていると、心の中の暗い部分が暴走して、おかしくなってしまいそう。アリーナは遮ると早口で捲し立てる。
「…そっか。私はクリフトの中ではその辺りの女の子とは違うって事ね。ううん、女の子でも無いんだわ、高貴な方、だものね。もう、良いわ、解ったから。…あなたの言ったようにこの話はもう止めましょう」
「…何が解ったのです」
クリフトはその真意を見極める様にじっとアリーナの瞳を覗き込んだ。その真剣な瞳にアリーナの胸はどきりと跳ね上がるも果敢に言い返した。
「解ったの!クリフトにとって、私なんてその程度の存在だって事でしょう?!…私はクリフトの事」
私は…、クリフトの事…。
何?
私にとって、クリフトという存在は…?
答が見えそうになった瞬間、アリーナは強い力で腕を掴まれ、強引に顔を上向かせられる。
「離して!」
みっともない顔を見られる!取り乱した声を上げると同時に見えかけていた答がふわりと朧げな形へと変化する。
待って。行かないで。私、その答えをずっと探しているの。
嫌々と頭を振るアリーナの瞳から涙が零れた。
「貴女は解っていない!貴女がその辺りの女性と同じな訳がないでしょう?」
自分の想いに気付かれる訳にはいかない。クリフトは苦しそうに眉根を寄せる。だが否定しないという選択は出来なかった。
自分の心を占領し続ける王女に『クリフトにとって自分はその程度の存在』という認識を持たれるのは我慢ならなかった。
「クリフト…」
一度はその剣幕に慄いたアリーナだが、冷静さを取り戻しながらクリフトを観察した。肩で息をするクリフトの顔は何かを堪えているように歪んでいる。
私が…解っていない。その通りだ。
何故、今、クリフトが感情を昂らせているのか、理解出来ない。
「離しなさい」
もう一度命じるも、離す素振りを見せるどころか、強く握り返された。痛みを感じ、アリーナは顔を顰める。
「貴女は私に命じる事が出来る高貴な方だ、…ええ、そうですよ。だから他の女性とは違う?そうですとも!違うから私はこんなにも心を苦しめられる!側に居たいと願うなら、何も言ってはならないから!」
「…クリフト」
暫く無言のまま瞳を地面に落としていた王女が名を呼ぶ。その静かに窘めるような声色で我に返ったクリフトは王女の腕を掴んだままの己の手を見つめながら返事を返した。
「はい……」
「命令違反よ。私が離してって言ったのに」
「申し訳…ありません」
掴んでいた場所にはそれと分かる指の痕が赤く残っている。
呆れた事だろう。訳の判らない不満を口にする臣下など、面倒で仕方が無いと。
「酷いわ」
腕を庇うように抱えながら呟く王女にクリフトは顔を強張らせる。
主人を守るどころか、怪我をさせるなんて。すぐさま頭を下げ、謝罪の言葉を口にした。
「申し訳ありません。如何様な処分も…」
「御蔭で忘れちゃったじゃない」
「…え?」
思わぬ台詞にクリフトが弾かれた様に顔を上げるとアリーナは悲しそうに微笑んでいた。
「私、あなたに何を言おうとしたのかしら。大切な事だった筈なのに。ずっと探していた答えが見えた気がしたのに……」
私が言おうとした言葉、クリフトが言えない言葉。
それは同じなのだろうか。それとも全く違うものなのだろうか。
今も心の奥深くに確かに存在しているのに。
型となりそうだった言葉は。
「消えてなくなってしまったわ」
「…そうですか」
アリーナの頬に残る涙の跡を指の腹で拭いながらクリフトもまた切なく微笑む。
「消えてしまった答えなら、それで良かったのですよ、きっと」
消えてはならなかった答えなら、また何時の日にか本当にその答えが必要な時に見つける事が出来るだろう。
否、見つからない方が良いのかも知れない。消してしまいたいと思う答えなど、この世には沢山ある。
クリフトは微笑みながら臣下の礼を取った、目を逸らしたくても逸らせない答えから逃れる様に。
「参りましょう、アリーナ様」


end.

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徒然vol.219
何時もご覧下さり、ありがとうございます。
中編「教父VS貴族院長」を読んで下さり、有難う御座いました。
連載している内に自分の中で展開がややこしくなってしまい、予定よりも終了が遅くなってしまいました。
思うラストに着地出来て良かった(笑)。

中編だけでなく、過去の短編にも拍手有難う御座いました。
過去のお話に拍手を戴くと、嬉々とするだけでなく、「ああ、そんな話もあったな」と思い出し、シリーズっぽいものだと続きを思い付いたりすることも結構(いや、かなり)あるので、創作活動をするこちらとしては拍手を戴けるとそう云う意味でもありがたかったりします。

6月の連載…と言いたい所なのですが、6月は中編で終わってしまったので、7月からの告知をしたいと思います。

一つ目は短編「見えそうで、見えない答え。」。
サントハイム三人組での旅の途中のお話です。ゲームで言う2章の終わり、エンドールを経ち、ブランカに立ち寄っている際の出来事となります。

二つ目は短編「最後の定期船」。
これも同じ時期で、ブランカとアネイルを経由後、コナンベリーからミントスへ向かう船の中でのお話となります。
こちらは長編に絡む記述もありますが、アリーナ姫はクリフト君の調子が悪い事を少しは知っているんだな、という予備知識だけで充分かと思います。

三つ目は「ずっと昔から。」というお話になります。
アリーナ編とクリフト編でのお届けとなります。
こちらも長編でのレイクナバあたりのネタバレ要素を含んでおりますので、そのあたりの二人のすれ違い等を意識して読んでいただけたらなという感じです。

結構詰め込みましたが、夏休み前という事で張り切って行きます。
読んでいただけたら嬉しいです。

Calender

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プロフィール

阿月さくら

Author:阿月さくら
ドラクエ4のサントハイムを中心とした二次小説を書いています。
SINCE.08/03/05

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