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ドラゴンクエスト4のクリフト×アリーナ(クリアリ)を中心とした二次創作サイトです。

saintheim はじめに…はじめて訪問された方は御一読下さい。



saintheim News 

何時も御覧下さり、有難う御座います。


■新着エントリー
  →これより以前のお話は「過去の更新情報08年~18年~)」内に掲載しております。

 ・09-21  ※きっと、あなたに恋を。
 ・11-02  ※徒然vol.222
 ・11-05  ※恋する人の事情
 ・11-09  ※神官と王女の『聖なる教育』 番外編その2
 ・11-15  ※物真似師の見分け方

■04/13、スピンオフ長編「Träumerei」、カテゴリ「スピンオフ」内にて連載開始しました。
■06/26、中編「教父VS貴族院長」、カテゴリ「父と母の祈念」内にて完結しました。
■11/02、「徒然vol.222」UPしました(バックナンバーは→コチラです)。

■02/09、2017年4月~のコメント返しを(それ以前はコチラより)させて戴いております。


saintheim Novel…長編・中編・短編等。

《 Long Piece 》…本編。クリアリ中心の長編物語。

《 Short Story & Short Novel 》…本編に添った、時系列毎の中編&短編集。

《 Spin-off 》…本編に登場する脇役を主人公とした物語。

《 Extra 》…本編とは違う設定のクリアリ長編&中編&短編集。

《 Project 》…他サイトの管理人様と企画して行った、コラボ作品。


saintheim Baton …フリーバトンや相互サイト様から回ってきたバトンに答えています。
 

saintheim Others …ドラクエ4以外のお話。
 

saintheim A play diary …DS版・ドラクエ4の攻略日記。


saintheim Illustration collection …イラスト。偶にフリイラも配布中。


saintheim Presents …個人的に戴いた物(フリイラ含)、差し上げた物。
物真似師の見分け方
「…ったく、クリフト」
ぺヴァルは小さく毒吐いた。
「何で気付かなかったんだよ」
勇者と背中を合わせているクリフトは顔を顰める。
「少しは褒めて下さいよ。一発で全員死亡の危機を免れたのですから」

monomane-manemane

時を少し遡る。
世界樹の花の力で再び命を得たエルフの娘ロザリーを伴い、導かれし者達一行はデスマウンテンで待つ魔王デスピサロの元へと向かっている。
今度こそ、悲劇の魔王を救う事が出来る。その期待は一行を急き、常よりも危険な行軍としている。
デスマウンテンの手前にある要塞のようなデスキャッスル内を文字通り駆け抜けていた一行は、背後から様子を伺っていた魔物に気付いてはいなかった。
戦闘を終えたばかりのサントハイムの神官クリフトは、王女の腕から血が流れているのに気付くと素早く中位回復魔法ベホイミの呪文を唱えた。
「有難う、クリフト」
恋人でもある愛する王女に笑みを返した、その瞬間。
「クリフト殿、魔物に背を取られるぞ!」
ライアンの怒声でクリフトは顔を強張らせ振り返った。
抜刀していて助かった。クリフトの眉間から汗が流れる。放たれた狂刀を何とか受け、弾いた。
「…なっ、其奴は!」
馬車内から顔を出したブライが青褪める。
クリフトが対峙しているのは、クリフト。
サントハイム神官の制服に身を包んだ青年神官は剣を握ったまま互いの瞳を合わせている。
「わ、私…!?」
クリフトは突然現れた自分の姿に動揺したものの、ブライの一喝で冷静さを取り戻した。
「戯けが!封じよ!」
これは、魔物。失われた古代魔法モシャスを操るマネマネに違いない。
「…くっ!」
クリフトは右手をもう一人の自分に突き出す。
だとすれば、自分に化けたこの魔物は危険だ。
もう一人の自分もまた右手を出し、呪文を同時に叫んだ。
「マホトーン!」
内なる魔力が抑えつけられるような感覚が身体を支配する。
もう一人のクリフト…クリフトもどきは舌打ちをした。
クリフトはクリフトもどきが使う可能性の高い即死魔法ザラキを封じる為に、クリフトもどきは自分に呪文封印魔法マホトーンを使われる前に魔法を封じてしまおうと放ったマホトーンで互いの呪文を封じたようだ。
…危ないところだった。息を吐くクリフトの背にぺヴァルが身体を預けてくる。
「前にも魔物が現れた」
「挟み撃ちとなっているのですね?」
「…ったく、クリフト」
ぺヴァルは小さく毒吐いた。
「何で気付かなかったんだよ」
勇者と背中を合わせているクリフトは顔を顰める。
「少しは褒めて下さいよ。一発で全員死亡の危機を免れたのですから」
「お前の失態だ、後ろの奴は任せたぞ」
背後にはクリフトもどき以外にも魔物が現れている。
「判りました。出来る限り早く仕留めます」
クリフトはクリフトもどきに打ちかかる。何度か切り結んだ後、魔物達がクリフトに攻撃を始めた。
魔物もマネマネとの区別がつかないのか、クリフトもどきにも魔物は攻撃を加えている。
埒があかないと感じたサントハイムの王女アリーナが現れた魔物相手に拳を振るい、蹴散らし始めた。
「姫様!」
「良いから、其奴を早く倒しなさい!」
アリーナは魔物の群れを一気に倒すとクリフトを振り返った。
後はクリフトもどきを倒すだけ。一対二なら此方に勝機がある。
「…あれ?」
アリーナは立ち止まり、眉を顰めた。
「…クリフトはどっちなの?」
剣を合わせたまま、二人のクリフトはアリーナに目を向けた。
「勿論私がクリフトです、姫様!」
『姫様、本物のクリフトは此方です!』
「えっ!…ど、どっちなのよ?」
頭を抱えるアリーナを余所にクリフトはクリフトもどきを睨んだ。
「ふざけるな、物真似の分際で!」
『そっちこそ、本物の振りをするな!』
どうやらマネマネは一か八か、クリフトの見分けがつかないアリーナを味方につけ、本物のクリフトを倒す作戦に出たようだ。
「…判らないわ、どっちが本物のクリフトなのかしら?」
アリーナはキラーピアスを握り締め、呟く。
「いっその事、どちらも瀕死にしたら良いのかしら?」
どちらも死ぬ可能性が高まった事を知ったクリフトとマネマネは顔を青褪めさせた。
「マネマネ!見逃してやるから、モシャスを解除し、逃げろ!」
『ふ、ふざけるな!そっちこそ姫様の前から立ち去れ!』
譲らない二人に困った顔を向けていたアリーナだが、
「そうだ」
ふと思いつき、口にした。
「ミゲル…、こんな時にミゲルが居てくれたら、私を助けてくれるのに」
『ミゲル?』
一人のクリフトは首を捻り、もう一人のクリフトは眉を吊り上げた。
「ミゲル、早く会いたい」
アリーナの言葉にクリフトは無様に喚く。
「はあっ?!あ、会いたいって…!あいつに何が出来ると言うのです!」
嫉妬を露わにするクリフトの手を握り、アリーナはニヤリと笑った。
「こっちが本物ね」

「機転を利かせて倒したみたいだな」
魔物を撃退し、ひと息ついた勇者はアリーナに質問した。
「ところでミゲルって、誰?」
「ああ、ミゲルね」
クリフトもどきを容赦無く攻撃したアリーナは爽やかな笑みを返す。
「クリフトの修道院時代からの友人よ。クリフトって、ミゲルと比べられるのを嫌うのよ。彼は神騎兵でクリフトの部下でもあるんだけどね」
「…へぇ」
ぺヴァルはクリフトに目を向けるとニヤリと意味ありげな笑みを浮かべた。
「お前は何処に居ても落ち着かないな?」
「…仕方ありませんよ」
クリフトは小さく溜息を吐くとアリーナの手を握る。
「私の恋人は筋金入りに男心を理解出来ない方ですからね」
「どーいう意味よ?」
ぎりりと強く手を握るアリーナにクリフトは苦笑を返した。
「そのままの意味ですよ」


end.

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神官と王女の『聖なる教育』 番外編その2
「…これで裏が取れましたね」
此処は歓楽の都モンバーバラ。滅多に人も訪れる事のない教会から現れた神官風情の男二人。
若く、神官服を着崩した男の名はサイード。そして、彼の上官である生真面目そうな男の名はクリフト。
何方もサントハイム王国の紋章が入った神官帽を被っている。
「これであの忌々しい事件も終わりです。やっと一息吐ける」
この度の事件を共に追っていた神官サイードの言葉に漸くクリフトは笑みを浮かべた。
「そうですね。全く…、伯爵も余計な事をしてくれた」
再び顔を顰めるクリフトにサイードは苦笑する。
「また眉間に皺が。姫様が心配されますよ」
「え、ああ、そうですね」
此処数日は心穏やかな時は無く、この件で散々心配させられたアリーナにもまるで仕返しのように心配を掛けっぱなしだった。
愛しい妻の名が出た事でクリフトの顔は再び笑顔になる。
「もう笑っていらっしゃる」
サイードは大きな声で笑う。
「皆様の仰る通りですよね、クリフト様は姫様をとても愛していらっしゃる」
「…普通ですよ、普通」
莫迦にされている気がしたクリフトは素っ気無く返すもサイードは再び大声で笑った。
「そうですね、クリフト様にとっては『普通』ですよね!ふふっ、勉強になります。俺に奥さんが出来たらその位溺愛したいと思います」
間違いなく、莫迦にしている。クリフトはサイードを睨んだ。
この神官はとても優秀で、神聖魔法だけで無く古代魔法の幾つかを習得している。魔術師としても頭角を現したであろうが、訳あって神官となった。
行動力もあるのでクリフトの片腕として重宝しているのだが、何しろ性格が軽い。神教会の中では『サントハイムのマーニャ』と陰口を叩かれている位だ。
サントハイムでもその性格と奇抜な衣装、そして唯一無二の踊りが有名だが、それ故にモンバーバラで地位を得たマーニャにとって、マーニャよりは幾らか常識人であるサイードにとっても、不名誉な呼び名だろう。
「お喋りはもう結構です、サイード。サントハイム城に戻りますよ。早く報告書を纏め、王に御報告致さねばなりません」
「はい、はい。今すぐに」
サイードは空間移動魔法の呪文を唱えた。

The sacred education of priest and princess

玉座に肘を付いたまま、クリフトからの報告を聴いていたサントハイム王ルシオは、ひとつ頷いた後、立ち上がった。
「…報告はその位で良い」
「しかし、まだ続きが」
「其処まで聴けば充分だ、第二部隊と隊長ミゲルの名誉は守られる。…クリフト、良くやったな」
「…はい」
思わず涙ぐみそうになるのを堪え、クリフトは頭を下げた。
「報告書を上げておけ。…それと俺の執務室に来い。今後の事を話そう」
「は、はい…」
先を行くルシオの背を見つめながら、クリフトは首を傾げた。
もう、この先の事も決めてしまうのだろうか?確かに早くミゲル達の行動は正義であったと世間に知らしめたい、だが早急過ぎる。
あの伯爵の事もあるのだ、貴族院に報告し筋を通さなければ、事は進まなくなる。
王の執務室に入ったルシオは、そのまま椅子に腰を掛けた。クリフトは扉の前でどうしてよいか判らず、固まっている。
「何をしている、クリフト?」
少しくだけた調子でルシオが声を掛けるとクリフトは更に困った表情を浮かべた。
「あの…、ミゲルの今後の事は貴族院に報告し、伯爵の自白を得た後でなければ…」
「ああ、解ってるって。後は俺が貴族院の連中に言っておく。…お前を呼んだのはそんな事じゃない」
「では、王…、一体」
「王、じゃない。義父上」
ニヤリと笑うルシオにクリフトは引き攣った笑みを返した。どうやら内密な打合せの類では無く、個人的な話であったようだ。それならば正直、一刻も早く報告書をきちんと整える時間に充てたいのだが。
「はい、御義父上様。一体何の御話でしょうか?」
「…俺には解っている、クリフト」
ルシオの紅蓮の瞳に射貫かれたクリフトは息を呑む。
義理の父ルシオは、予言王と呼ばれる程、未来の夢を紡ぐ。
其れは世界の行く末に関わるものから朝食の内容まで、多岐に渡る。
「アリーナが苦労を掛けるな。…口にするのも難しい悩みをお前には押し付ける結果となり、申し訳ないと思っている」
「!」
クリフトは顔を青褪めさせた。
アリーナはとても良い妻だ。環境の違いに戸惑う事も互いに多いが、それよりも漸く誓った未来を手に入れた歓びの方が勝り、何れも些細な、取るに足りない事としか思えない。
だが。クリフトは額の冷や汗を拭う。確かに口にするのも難しい悩みがある。
自分で言うのは何だが、自分とアリーナは実に仲睦まじい。
が、其れは互いの心を通わせ合っている、という意味であり、夫婦として身体を交わす事は無い。
そういう行為が嫌だという訳ではない、と言うか、その段階にも至ってはいない。
単純にアリーナは知らないのだ、子を得たいと願うならどういう行為を致さねばならないかを。
全ては自分の身から出た錆。彼女の未来の夫に対する嫉妬から、その手の教育を怠った自分が悪い。
「御義父上様は、御存知なのですか…?」
夢の形で、視てしまったのだろうか?クリフトは探り探り義父に尋ねる。
「その……、私の悩みを」
義父に夜の営みに関する相談をする羽目になろうとは。自分は勿論、ルシオも不本意に違いない。
「…お前も知っての通り、アリシアは女だけの王国に生まれた。身体が弱いからと深窓の令嬢のように育てられていたから色々と知らない事も多かった」
クリフトは小さく頷いた。本来なら、子を産む事も難しい程に身体が弱かったと聞く。
御輿入れ等は許される筈もなかっただろう、子が産めなければ政略には使えない。実際、かの国の女王にルシオが結婚を申し込んだ際、断られた為、駆け落ち同然でサントハイムに来たという。
恐らく其れに付随する知識を与えられる事も無かっただろう。
「お前もお子様なアリーナには手を焼いている事だろう」
「そ、そんな事は…、い、いえ、そうなのかも知れませんが。でも私に全ての責任はあるので」
「そんな事は無い。知らないというのはそれだけで罪だ。知ろうとしていないのだからな」
「御義父上様…、ですが私は彼女を怖がらせる位ならもう少し待とうと…」
「大丈夫だ。知ればきっとアリーナも喜ぶ」
「そ、そうでしょうか?」
「そうだよ。お前の御師匠様に聞いてみろよ、その手の喜ばせ方はよーく知っているから」
ルシオは笑うと複雑な表情を浮かべるクリフトに本を差し出した。
「でも、ま、あいつはお前の前では聖人君子面をするから絶対教えないだろうけど。其処でこの本だ」
クリフトは本を手に取り、何気なく広げる。が、一瞬で閉じた。
これは以前ブライに押し付けられそうになった本の比では無い。
夜の営みが何たるやも知らぬ初心者が手を出して良い本では無い。
「御義父上様…この本は一体?!」
「俺が昔キングレオへの視察に行った際、モンバーバラで手に入れた物だよ。それがあればお前の師匠並みに技術力のある男になれるって寸法さ」
「あの……仰っている意味が少し解らなくなってきたのですが」
「ん?新婚だし、色々としてみたい事もあるだろ?」
「……」
色々も何も。何も始まっていない。
「それとさ、これもやるよ」
ルシオから放られた小瓶を掴むと訝しがりながら瓶の蓋を開けた。妙な香りがする。
「簡単に説明すると『興奮剤』だよ。俺も早く孫とか見たいしさあ」
アリーナに飲ませてみろよ、お前、眠らせてもらえなくなるぜ?アリーナの実の父とは思えない発言をするルシオに若干軽蔑の眼差しを送る。
「御期待に沿えるよう努力します。取り敢えず御義父上様、この本はお返ししま…」
クリフトが突き返そうとした瞬間、後ろから本を取り上げられた。焦りながらクリフトは振り返り、一瞬で青褪める。
「パ、パリス様……!!」
パリスはすました顔で本の中身を確認した後、クリフトににっこりと微笑んだ。
「クリフト。この本はサントハイムに存在してはならない物ですよ?」
「解っています、勿論!そ、その様な物とは知らず、…御義父上様がお渡しになったので手に取ったまでで」
「御義父上様?」
パリスは首を傾げる。
「何処にいらっしゃるのです?」
「え!!」
居ない!
テラスに通じる扉は開かれ、風に煽られたカーテンが優しく揺れている。
パリスの気配を感じた瞬間、テラスに逃げ、瞬間移動魔法ルーラを使ったに違いない!
「王の執務室に忍び込んでまで知りたい事があるのなら」
パリスは妖艶に微笑むとすっかり血の気が引いたクリフトの顎を掴み、顔を寄せた。
「私が教えてあげましょうか?」


end.

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恋する人の事情
本日の戦闘は魔法戦が多く、ブライとマーニャの魔力が早々に切れた為、まだ昼を少し過ぎたばかりだと云うのに一行は宿場町に滞在していた。
小さな宿場町だが、雰囲気のある店や雑貨が多い。「此処は当たりだったわね」とマーニャはご機嫌だった。
疲労感のあるブライを宿に残し、アリーナとクリフトは町を散策している。途中、雑貨屋を覗いているマーニャやミネアを見かけたりした、各々自由時間を満喫しているらしい。
変わったグラスで作られたランプが沢山吊るされた、賑わうカフェに吸い寄せられるように入った二人は、席に案内されるや否や、直ぐに入店を後悔した。
隣に座っていた男女は恋人同士だったらしく、机の上で互いに手を取り、愛を囁き合っている。
だからと言って、他に空いている席も無く、何も注文もせずに外に出る訳には行かない。仕方なく二人は腰掛けた。

my heart

「紅茶を二つ。此方の女性には甘い物も」
クリフトが注文すると店員は和かに頷き、台所へと引っ込む。
その背を何となく見送っていたクリフトにアリーナが声を掛けた。
「…ああいう感じの女性が好みなの?」
別に嫉妬した訳ではない。クリフトが見ようと思って見ていた訳では無い事にも気づいていたが、アリーナは話題作りに言ってみただけである。
「え?」
クリフトは直ぐには質問の意味が解らなかったようで、暫く考えた後、答えた。
「…んー、どんな顔をされていたか、覚えていないんですけど」
クリフトは苦笑いをする。先程の店員に失礼な言い方であるのを自覚しながら。
「そうなの?」
「ああ、スタイルは良かったかも知れませんね。後ろ姿は何となく覚えています」
アリーナは笑いながら頬杖をついた。
「…クリフトって、顔よりも身体なんだ?」
「誤解を招く言い回しですね。淑女はそのような事を仰るべきではありません」
クリフトは嫌そうな顔でアリーナを窘める。
意味をきちんと理解した上で言っている訳では無いのだろうが、マーニャの影響を少しずつ受けている事に危機感を募らせるこの頃である。
「…はーい」
アリーナが肩を竦めると先程の店員が紅茶を二つとシフォンケーキを持って来た。
「この地方で有名な木の実を混ぜてあるんですよ」
店員の言葉にアリーナは笑みを浮かべる。
「楽しみだわ。色んな地で美味しい物が食べられるのは、旅の醍醐味よね」
「皆さんそう仰いますね。お口に合えば良いのですが。…では、ごゆっくり。この町のひと時をお楽しみ下さいね」
店員が立ち去った後、アリーナは前屈みになり、小声で尋ねる。
「ね、顔はどうだった?」
「え?…見ていませんでした」
クリフトは紅茶を手に取りながら答えた。
「この紅茶、香りが良いですよ」
アリーナは不満そうに溜息を吐く。
「少しは女性にも興味を持ってよ」
「そう申されましても…」
紅茶を口に運ぶクリフトが苦笑を零したその時。

『僕は君の事しか見えないんだ』

思わず紅茶を噴き出しそうになるのをクリフトは辛うじて堪えた。唖然としながらアリーナは隣の席の男性に目を向けている。
…何というタイミングでそんな台詞を。
アリーナに想いを寄せ続けているクリフトにとって、他の女性に目が行かない理由は隣の男性が言った言葉そのものの為、何となく恥ずかしい。
「アリーナ様、あまり見ては失礼ですよ…」
クリフトが小声で囁くとアリーナはハッと我に返りフォークを手に取った。
「ごめんなさい、ちょっと吃驚しちゃって」
私はかなり吃驚した。クリフトは同意するように小さく頷く。
「…それよりアリーナ様、ケーキのお味は如何です?お好きな味なら良いのですが」
妙な空気を誤魔化すようにクリフトが尋ねるとケーキを頬張るアリーナは笑顔を見せた。
「うん、美味しい!私ね」

『あなたの事が好きなの』

隣の女性の告白にアリーナが固まる。フォークに刺さっていたシフォンケーキがポロリと皿の上に落ちた。
「ち、違っ…、ケーキが!このケーキのような控え目な甘みが好きなの!」
間違って告白してしまったような羞恥心を覚えながら、アリーナは頬を染める。
クリフトも瞳を泳がせながら頷いた。
「解っています。私達はケーキのお話をしているのですから」
「そ、そうよね」
アリーナも頷き返し、「自分達の会話に集中、集中…!」と心に言い聞かせる。
「クリフトも食べてみる?ほら、最後のひと口だよ」
「いえ、貴女が召し上がっていらっしゃる物を戴く訳には参りません」
「そんなお堅い事を言わずに」
アリーナはフォークにケーキを突き刺し、差し出した。
「其れとも私なんかが食べた物は要らない?」
「いえ、そのような事は…、私は…」
ケーキを差し出すアリーナの可愛らしい仕草に思わず頬を緩めながら、クリフトは見つめる。

『君が居れば、僕は何も要らないよ』

その台詞を聞いたアリーナが瞳を大きくし、クリフトは顔を真っ赤に染めた。
「…ケッ、ケーキが要ります!戴きますっ!!」
アリーナの手からやや強引にフォークを取り、口に放り込む。
「う、うん…、ケーキね」
アリーナはややぎこちなく笑みを見せた。
「ええと……、美味しい?」
「…はい」
クリフトは頷いたものの、正直、味を楽しむ余裕は無い。


…居た堪れない。
アリーナとクリフトは難しい表情を浮かべ、一方は冷たくなり始めた紅茶を口に含み、もう一方は本日の天気でも窺うように空へと瞳を向けた。

『ずっと昔から、君の事を愛していたんだ』

…落ち着け。
まるで私の感情を代弁しているようだが。
クリフトは流れる雲を見つめたまま己に言い聞かせる。
隣に座っている男が自分の感情を目の前の女性に伝えているだけだ。
動揺する必要等、微塵も無い。

『私も…思い出せない位、前からずっと好きだった』

…大丈夫。
私が言っている訳では無い。
アリーナは息を吐き出しながら紅茶の茶器をゆっくりと置いた。
隣に座る女性が自分の感情を目の前の男性に語っているだけ。
アリーナはちらりとクリフトを窺う。
腹が立つ位、隣に無関心だわ。
クリフトも私に少しは興味を持ってくれたら嬉しいのに。
「…このまま北上するのかしらね?」
アリーナの問いにクリフトは曖昧に頷いた。
現在一行は、キングレオに向かっている。
ミネアの話によると此処は丁度モンバーバラとコーミズ村の中間付近らしい。
「まだはっきりとは決まっていませんが、コーミズ村に寄るかも知れません。このまま…」

『君を一人連れ去る事が出来れば良いのに』

…怯むな。
一瞬固まるも、クリフトは己を叱咤し、続ける。
「…このまま全員で北上し、直接キングレオを目指すかも知れませんが」
進化の秘法を操り、魔物と化したキングレオ王を野放しにしておく訳には行かない。一刻も早くキングレオを倒したいが、コーミズ村はマーニャ達の故郷。追われるようにこの国を出てから一度も墓参りをしていないという。
二人は今仇敵を前にして少し地に足が着いていない状態にある。英気を養う為にも冷静さを取り戻す為にも寄るべきかも知れない。
「コーミズ村に寄ってもそれ程遠回りにはならない筈よね?…キングレオ王の事は気になるけど、先ずはお墓参りをするべきだと思う。『絶対に倒すから守ってあげて欲しい』って二人のお父様にお願いしないとね」
アリーナは背凭れに身体を預け、独り言のように呟く。
「…私達も……、長くサントハイムに戻っていないわね」
「……はい」
「クリフト、…私ね」
そして、神妙に頷くクリフトを見つめた。

『どんなに辛くても私は…生まれ育ったこの地を棄てる事は出来ない』

…その通りよ。アリーナは小さく笑う。
隣の女性も私と同じなのね。
予知夢を視ない、役立たずの王女。
その重圧に耐えられず、飛び出した故郷。
父王や城の皆を失い、痛感した。
私は王女なのだ。
サントハイムからは逃げられない、逃げる訳には行かない。
見棄てる事など、出来ない。
「………」
苦しそうに瞳を閉じるアリーナを見つめたまま、クリフトは膝の上でぎゅっと拳を握る。

『…解ってる、僕は君を守り続けるよ。身の程知らずと罵られようと、例え君との未来が交わる事は無くても、其れが僕の愛だから』

……右に同じ。クリフトは小さく笑った。
どうやら隣の男性も道ならぬ恋をしているようだ。
アリーナの手を包むように握り、囁く。
「全てを取り戻し、帰りましょう。何があろうと、私は貴女と共にあります」
「クリフト…」
アリーナは微笑み、クリフトの手を握り返しながら頷いた。

「…『其れが僕の愛』、か……」
宿へと続く道を歩きながら、アリーナは呟いた。
「上手く行くと良いね、さっきの二人」
クリフトは歩みを止め、アリーナの背に問いかける。
「…姫様は赦されると思いますか?」
身分無き男がその身に相応しく無い想いを抱く事を神は赦すだろうか?
「……どういう意味?」
立ち止まったクリフトをアリーナは振り返り、見つめた。
クリフトの表情は強張り、瞳には暗い色を落としている。
「彼が犯した、身の程知らずな恋を神は赦すのでしょうか」
「…赦されるわよ」
アリーナはしっかりとクリフトの瞳を見返しながら答えた。
「だって、彼女もまた彼を愛しているんですもの」
「…そうですね」
クリフトは瞳を伏せると小さく笑みを浮かべる。
「どのような立場にあろうと、二人が想い合っているのは真実ですから」
アリーナは幾らか表情を和らげたクリフトに背を向けながら安堵の息を吐く。
「うん」
そして自分に言い聞かせるように言葉を紡いだ。

「其処に真実の愛が交わされるなら、どんな立場の者達であろうと神様は赦して下さる」


end.

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徒然vol.222
すみません、仕事で色々あって10月の更新が無理でした(汗)。

早速ですが、今月の更新案内です。
先ずは「恋する人の事情」というクリアリ二人の片思い中のお話をUPしたいと思います。
冒険中のお話で、時期的にはキングレオを倒しに向かっている最中の頃となります。

二つ目は「神官と王女の『聖なる教育』 番外編その2」。
前回の番外編はパリス様とご一緒させていただいたので、今回はルシオ様とのお話です。
お時間があればご覧下さい、というレベルです(苦笑)。

三つ目は「物真似師の見分け方」。
二度目の冒険中、デスキャッスル攻略中の時期のお話となります。
二人は恋人同士の時期でもあります。


これだけでもいっぱいいっぱいな感じです。
取り敢えず、今月はこの三本でお願いします!!


きっと、あなたに恋を。
きっと、あなたに恋を。 (18/09/04~18/09/21)
きっと、あなたに恋をする。
ミネアが戯れに作った『おかしな薬』が招く、二つの想い。


きっと、あなたに恋を。 その1

きっと、あなたに恋を。 その2

きっと、あなたに恋を。 その3

きっと、あなたに恋を。 その4

きっと、あなたに恋を。 その5

きっと、あなたに恋を。 その6

きっと、あなたに恋を。 その7


Calender

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プロフィール

阿月さくら

Author:阿月さくら
ドラクエ4のサントハイムを中心とした二次小説を書いています。
SINCE.08/03/05

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