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ドラゴンクエスト4のクリフト×アリーナ(クリアリ)を中心とした二次創作サイトです。

saintheim はじめに…はじめて訪問された方は御一読下さい。



saintheim News 

何時も御覧下さり、有難う御座います。


■新着エントリー
  →これより以前のお話は「過去の更新情報08年~18年~)」内に掲載しております。

 ・01-04  ※とある男の嫁探し その1
 ・01-07  ※とある男の嫁探し その2
 ・01-10  ※とある男の嫁探し その3
 ・01-14  ※とある男の嫁探し その4
 ・01-17  ※とある男の嫁探し その5

■04/13、スピンオフ長編「Träumerei」、カテゴリ「スピンオフ」内にて連載開始しました。
■06/26、中編「教父VS貴族院長」、カテゴリ「父と母の祈念」内にて完結しました。
■12/27、「徒然vol.224」UPしました(バックナンバーは→コチラです)。

■02/09、2017年4月~のコメント返しを(それ以前はコチラより)させて戴いております。


saintheim Novel…長編・中編・短編等。

《 Long Piece 》…本編。クリアリ中心の長編物語。

《 Short Story & Short Novel 》…本編に添った、時系列毎の中編&短編集。

《 Spin-off 》…本編に登場する脇役を主人公とした物語。

《 Extra 》…本編とは違う設定のクリアリ長編&中編&短編集。

《 Project 》…他サイトの管理人様と企画して行った、コラボ作品。


saintheim Baton …フリーバトンや相互サイト様から回ってきたバトンに答えています。
 

saintheim Others …ドラクエ4以外のお話。
 

saintheim A play diary …DS版・ドラクエ4の攻略日記。


saintheim Illustration collection …イラスト。偶にフリイラも配布中。


saintheim Presents …個人的に戴いた物(フリイラ含)、差し上げた物。
とある男の嫁探し その5
「アルスター様!」
名を呼ばれたアルスターは嬉しそうに返事をした。
「おお、我が友クリフト君ではないか!」
此処までは空間移動魔法で来たのだろう、側に居た神騎兵に「半刻経って姫様と私が城に戻らなければ、ブライ様に来ていただくよう王に報告して下さい」と伝えた後、アルスターを睨むように見つめ、
「友ではありません」
とぴしゃりと訂正したクリフトは、走って乱れた装いを正し、アリーナに目を向ける。
「クリフト…何で此処に」
「何で、ではありません。アルスター様と一緒だと聞き、此処まで追いかけてきたのではありせんか!」
アリーナは機嫌の悪いクリフトをまじまじと見つめる。
「もしかして、嫉妬してる?」
「してますよ!いけませんか?!」
即答するクリフトから逃げるようにアリーナはアルスターの背に隠れ、顔を俯かせた。
今、顔を見られたら、クリフトはもっと機嫌が悪くなる。アリーナは嬉しさでニヤつく顔を必死に抑える。愛されていると実感出来る言葉は、いつ何時聞いても心が躍る。
そんなアリーナの様子に気付かないクリフトは、攻撃の矛先をアルスターに変えた。
「どういう事なのか、説明してもらっても宜しいですか…!」
「勝手に連れ出したのは謝る!私が全面的に悪い!」
国の利益の為にもクリフトの為にも、どうかアリーナの身分が知れるような事を言わないでくれと祈りながらアルスターは何とか説明を試みる。
「色々とあって、だな…!」
ナスダはふむと頷くとアリーナに目を向けた。
「…君はアルスター公子という立派な相手が居るのに、この神官にも言い寄られているのか」
余計な事を…!王子の言葉に顔を引きつらせたアルスターをクリフトは睨む。
「言い寄られている…?私と公子に」
「そ、それにも、い、色々と訳がある…!」
慌てるあまり吃るアルスターをクリフトは更に睨んだ。
次々と邪魔が入り焦れたナスダはアリーナに詰め寄るとその肩に手を置く。
「そろそろ返事をくれないか?」
アリーナはさり気無く手を払いながら愛想笑いを返した。
「えーと、返事…って、求婚を受けるかどうかの?」
クリフトは驚いた顔をアリーナに向ける。
「求婚?!この方に求婚されたのですか?!!」
この気安い男性は、明らかに異国の人間、アリーナが王女である事を知らないに違い無い。
「んー、まあ、…そう」
渋々頷くアリーナを男から見えないように背に隠し、クリフトは叫んだ。
「無礼者!」
その言葉にクリフトこそ無礼だと知るアリーナとアルスターが顔を強張らせる。
「この御方はサントハイムの姫、容易く婚礼話など持ち出して良い相手では無い!」
「……」
「………」
暫くの間、時が止まったかのような静寂が支配した。
「何…、サントハイムの姫君だと?」
最初の沈黙を破ったナスダにアリーナは苦々しい表情で頷いた。
「…そう、です」
「このような場所でばったり会う相手がサントハイム王国の姫君だとは…!貴国は姫に供も付けず、一体何を考えているんだ!」
「それはバスラ王国も同じでしょう?ナスダ王子も御一人で他国を歩いてるではありませんか」
「む…、確かにそうだな」
同じか!と呑気に笑う王族達を呆然と眺めていたクリフトは、ハッと我に返った。
バスラ王国?クリフトは眉を寄せる。確か、魔法具に魔法を定着させる為に必要な鉱物資源が豊富な砂漠の国だった筈。
国土は小さいが貴重資源を取引に使う為大国並みの力がある国だ、確かにこのような街角でばったり会う身分で無いのは間違いない。
「申し訳ありません!」
己の失態を悟り青褪めたクリフトは平伏する。
「姫様に不相応な身分と早とちりをし、ナスダ様には御無礼を申し上げてしまいました!」
「ん…」
ナスダはクリフトから目を逸らすと考える素振りを見せる。
今度はアルスターが頭を下げた。
「どうかナスダ様、寛大な措置を!彼はこのサントハイムにとってアリーナ姫の兄のように敬われる存在なのです。彼への慈悲は、神もサントハイムも、貴方に恵みを齎らすでしょう!」
「…アルスター様」
クリフトを庇う言葉を並べ必死に頭を下げるアルスターを毒気の抜かれた表情で見上げるクリフトを見つめた後、ナスダはアリーナに向いた。
「アリーナ姫」
「…はい」
対等な身分と知れたのだ、国家事業として婚礼話を切り出されてしまうだろう。そうなれば先程までの感情論は通用しない。
身構えるアリーナを見つめながらナスダは頭を下げる。
「申し訳ないが、今の話は無かった事にして欲しい」


・・・「とある男の嫁探し その6」に続きます。


とある男の嫁探し その4
「さて。姫はどちらに行かれたか」
仕事を無事終えたアルスターは騒ぎになっている場所を目指しながら歩いていた。
やはり。遠巻きながらも人垣が出来ている間から覗くと、困った顔のアリーナが見ず知らずの男に手を掴まれていた。
何故直ぐにこのような面倒を引き起こすのだ。旅の中のクリフトの苦労に同情しつつ、アルスターはアリーナに近づいた。
「あ!アルスター!…様」
助かったと言わんばかりに顔を輝かせたアリーナにアルスターは眉を顰める。
今の台詞、変ではなかったか?
アルスター、『様』?
「あの、何故に」
敬称を付けるのか。アルスターの素朴な問いは捲し立てるアリーナに遮られた。
「私、この王子様に求婚されているんですけど…!」
「求婚?」
アルスターは改めてアリーナの手を握る青年に目を向けると「あっ」と声を上げた。
「ナスダ様」
「おお、これはこれは大公の息子殿ではないか」
二人の会話にアリーナはギョッと目を丸くする。
「し、知り合い?」
「サントハイムとは我が国の地下から産出される鉱物資源の取引があるのだ」
ナスダの説明にアルスターが付け加える。
「その鉱物は、魔法具を作る際に必要不可欠な鉱物なのだ。バスラとの関係が壊れれば、サントハイムの魔法具開発は頓挫する」
サントハイムにとって最重要な貿易国ではないか。結婚が現実の色を付け、アリーナは表情を曇らせた。
「困るのは我が国も同じだ。サントハイムの魔法具は我が国の兵の命を何度も救った」
それには気付かない笑顔のナスダを横目にアルスターはアリーナに囁く。
「身分は?」
アリーナは小さく頭を横に振った。
「まだ知られてない」
アルスターはホッとした顔で頷く。だから自分に対し敬称を用いて身分を低くみせたのか。
ナスダの国バスラとサントハイムは大きな取引がある、ナスダを無下に扱う事は出来ない。そんなナスダがアリーナを気に入ったと貴族院に知られれば、王女の早期婚礼を望む彼等は大いに喜ぶだろう。
二人の婚礼はあっという間に決まってしまう。
それは困る。
アルスターは唇を噛んだ。
そんな事になれば、この事態を誘引した自分はクリフトに恨まれ、彼に認められた友人には一生なれなくなってしまう。
何としても此処は自分が防がねばならない。
逆に上手くナスダを退かせればクリフトも感謝し、心を開いてくれるかも知れない。
目一杯の打算が脳裏を過ぎったアルスターは腹を括った。

「ナスダ様。申し訳ないのですが」
悪目立ちする二人を連れて人目のつかない場所に移動した後、アルスターは切り出した。
「何だ、アルスター公子」
済まない、クリフト君…!アルスターは心の中で謝罪した後、声を出した。
「彼女は近々結婚せねばと思う女性なのです」
「え?!」
アリーナとナスダが声を合わせる。
アリーナ姫、ここは私に合わせてもらわねば困る…!間に受けて動揺するアリーナに念じつつ、アルスターは続ける。
「ずっと恋い焦がれた女性だし、この人も少なからず自分を想ってくれている事ですし」
「そうか…」
ナスダは唸る。
「これ程の女性なら、君が見初めるのも無理はない」
ナスダの言葉を聴きながら、アリーナは僅かに染まる頬を抑えた。
アルスターの事は嫌いではない。恋愛とは違うが、自分がアルスターを慕っているのは間違い無い。
そのような事を言われれば単純に嬉しい。
「でも私…」
それでも私はクリフトを愛している。
クリフト以外には考えられない。


・・・「とある男の嫁探し その5」に続きます。


とある男の嫁探し その3
「アルスターに何を頼んだか、だと?」
国王の執務室。
アリーナの父であるサントハイム王ルシオは座したままクリフトを見上げた。
「神教会のお前には関係無い話だ。答える必要は無い」
彼の前に置かれた小さなテーブルの上には対局中のオセロ盤と未開封の葡萄酒がある。
そのテーブルを挟んで座るのは、クリフトの師であるサントハイム教父パリス。苛立つ顔をクリフトに向けている。
「邪魔をしないで下さい!クリフト!私達は大事な勝負の真っ最中なのですよ?」
勝負とは状況から考えてオセロの事なのだろう。
問題は未開封の葡萄酒。パリスの機嫌から推測するに恐らくルシオが勝てば堂々と酒を飲む許可を与える約束を交わしたのだろう。パリスは意外と負けず嫌いだ、勝負に負けるのが怖いのかとか何とかルシオに言われ、上手く乗せられたに違いない。
「アルスター様の仕事に関する詮索は致しませんし、此処で手に入れた情報は誰にも口外致しません。ただ、アルスター様が向かわれた場所が知りたいのです。恐らく姫様が同行されています」
「アルスターなら上手くあの暴れ馬を御するだろう?あの男はアリーナのお気に入りだからなぁ。夕方には戻るさ、放っておけ。……ほら、パリスの番だ」
打ちながらルシオは答える。どうやら全く心配はしていないらしい。
「無断で連れ出されたのです、城の警備を任される我々は面子の為にも動かねばなりません」
「お前の嫉妬の為に兵団を使うだけだろ?そんな狭い器量だとアリーナに捨てられるぞ。……良し、俺が勝てそうだな」
ぴくりとこめかみに青筋を立てたクリフトは、「失礼します」と断り、パリスの代わりに一手打った。
「あっ、お前!」
ルシオは顔を引きつらせ、対照的にパリスの表情は明るくなる。
「なるほど、その手がありましたか!」
そこを取られてしまえばルシオの勝機は一気に低くなる。
「ルシオ様が何処に打たれようと、あと二手でパリス様の勝ちにする事が出来ます」
「ず、狡いぞ、クリフト!…移民の街だ!アルスターは其処にとある密書を届けに行った」
「有難う御座います」
クリフトは頭を下げた後、「この勝負は無しだ」「有りだ」と口論を始めた二人に背を向けた。


移民の街は様々な人種が様々な理由で集い、作り上げた街だ。街は今も成長しており、来る度に様々な顔を見せる。それはどの街にも真似出来ない、素晴らしい特色だ。
楽しそうに道具屋や雑貨屋を眺めながら歩いていたアリーナは、視線を感じ振り返った。
「こんにちは、お嬢さん」
「…こんにちは」
目を瞬きながら、アリーナは目の前の風変わりな青年を見つめる。
他国の者であるのは間違いない、着ている上等な衣装はブランカの要素を持つ。
見知った顔だから声を掛けて来たのだろうか?アリーナは警戒しつつ帽子を目深に被る。
「そなたは庶民か?」
「……」
どうやらサントハイムの王女とは知らずに声を掛けてきたらしい。
世間知らずのブランカの王族か、その周辺諸国の貴族なのだろう。庶民は普通、見ず知らずの相手に「庶民か?」とは尋ねない。
だとすれば、こちらの身分は伏せるに越した事はない。長い旅の経験を生かして賢明な結論を出したアリーナはにっこりと笑った。
「庶民です」
とは言えやはり此方も世間知らずな姫君なのだ、この返しも庶民としては有り得ないものであったが、相手の男は満足そうに頷いた。
「そうか、庶民か!良かった」
「あの…、道に迷ったのですか?私もこの街にはそれ程詳しくないのだけれど」
宿は何処にあっただろう?街の地図を頭の中で展開しながら問うアリーナの手を男は掴んだ。
「あ、あの?!」
「私の名はナスダ。ブランカ大砂漠にある国バスラの王子だ」
「え?お、王子?!…様、なのですか?」
「お前は美人だし、庶民の割には品もある。是非我が妃として迎えたい」
「…は、はぁ?!冗談じゃな…い、いや、ええと、ちょっと、突然過ぎるのですが」
妙な男と関わり合いになってしまった。アリーナの背に冷や汗が伝う。
バスラ王国、聞いた事がある。確か何かサントハイムには欠かせない重要な品で国同士の取引がある筈だ。
自分が王族と知れたら、これ幸いと簡単に婚礼の話が進むかも知れない。貿易国の王子相手ならサントハイムも乗り気になる可能性は高い。
絶対に『サントハイム王女』である事は知られてはならない…!


・・・「とある男の嫁探し その4」に続きます。


とある男の嫁探し その2
「クリフト様、大変です」
執務室に駆け込んで来た神官ルイに目を向けたクリフトは、手にしていた書類をやや乱暴に卓に置いた。
「騒々しいですよ、ルイ」
「も、申し訳ありません」
今日は機嫌が悪い。ルイは不機嫌さ丸出しのクリフトから目を逸らすように頭を下げる。
上司であるこの神官はアルスター・フィーニアスが登城した時は必ず不機嫌になる。
アルスターはアリーナの婿候補の一人であり、最もその座に近い貴族だ。
それだけならば、今や王女の愛を射止めたこの男の心にも多少は余裕があっただろう。流石に王女と結婚出来るとは思っていない筈だ。
彼が平常心を保てないのは、そのアリーナ姫がアルスターに好意を寄せているからだ。
自分にとって全てである王女の心変わりを彼は何よりも恐れている。
「姫様次第で気分を変えるのは何とかならないのかな…」
そのとばっちりを受けるのは、我々神教会の人間なのだが。
「何か言いましたか?!」
眉間に縦皺を寄せるクリフトにルイは愛想笑いを返した。
「…空耳です、クリフト様」
「…で、何が大変なのです」
クリフトは再び書類を手に取りながら問う。
…言い難い。ルイは一瞬固まったが、仕方無く報告した。
「姫様が城内にいらっしゃいません」
「な、何っ!」
書類を持つ指に力を込めるクリフトにルイは慌てて縋る。
「それ、パリス様もご覧になる書類ですよね?!…く、くしゃくしゃですよ……!」
直ぐにクリフトから奪い、卓上で伸ばすも元通りの状態とは程遠い。悲しそうに溜息を吐くルイに既に書類の事など頭から消えているクリフトが問う。
「城門兵は何をしていた?」
「彼等からは姫様は御通ししていないと報告が上がっております。中庭に空間移動魔法ルーラを使った痕跡がありました、恐らく」
「姫様は其処から城を出たと?…姫様は魔法をお使いにはならない」
「勿論存じております。院長ブライ様に確認を取りましたが、当院の魔術師が使用した魔法では無いと。勿論神教会の者でもありません」
「では、誰が?まさか…攫われた?」
クリフトはさっと青褪めるもルイは半笑いで手を横に振った。
「それは無いかと」
魔王を倒した導かれし者の一人である女傑だ、そんな命知らずは流石に居ない。
「知り合いなら簡単に連れ出す事が出来るだろう?!…姫様が最後に目撃された時は誰と一緒だった?」
…やはりその質問からは逃がれられないか。ルイは小さめな声で答えた。
「アルスター公子様です」
「なっ、アルスター公子様だと!」
クリフトが勢いよく立ち上がるとルイも背筋を伸ばした。
「…彼なら魔法が使える可能性が高いか。…くそっ、油断した」
独り言をぶつぶつ言った後、クリフトは扉に手を掛けた。
「ルーラが使える神騎兵を一人、城門へ呼んでおいてくれ。私は王にアルスター様の行先を聞いてくる」


「この乾いた風、気持ち良いわよね!」
アリーナは小さな身体を目一杯伸ばす。
「自由を感じるわ!」
その背後に立つアルスターは咎めるような瞳をアリーナに送りつつ溜息を吐いた。
「結局連れて来てしまったな」
だが、連れて行ってくれないなら勝手に何処かに行くと半ば脅しを掛けられたのだ、アルスターとしては止むを得ない選択だ。
「アリーナ姫、くれぐれも街からは出ないように頼むよ。私の用が済めば直ぐに城に戻る約束、忘れないでくれたまえよ?」
「解ってる!ゆっくりして来て良いからね」
手を振り、さっさと街の中に入って行く姫君の背に向け、アルスターは再び溜息を吐いた。
「厄介事が起こる前に何としても急ぎ終わらせねば…!」


・・・「とある男の嫁探し その3」に続きます。


とある男の嫁探し その1
「むー……」
此処はサントハイム南東部に広がる砂漠に存在する、移民の街。
庶民とはかけ離れた上等な服を身に纏う青年は一人、首を傾げた。
「他国であっても、なかなか美女は居ないものだな」
かなり失礼な感想を述べている青年をすれ違い様に見る者が多い。この移民の街はかなり風変わりな者も多いのだが、今の環境に不満など無さそうなこの青年はかなり異質な存在だ。
「我が妃となりうる庶民は何処に居るのだ…!」
彼の名はナスダ。
遥々この移民の街に嫁探しにやって来た、とある国の王子である。

Looking for wife

その頃、サントハイムのお城では、アリーナ王女がお人好しの貴族相手に駄々を捏ねていた。
「どうして黙っていたのよ?」
「態々話す事でも無いと思わないのか、君は?」
弱り顔の貴族の名はアルスター。貴族院長フィーニアス大公の息子で、アリーナの婿の座に最も近いと噂される公子だ。
「嘘!私に知られたくなかっただけでしょ?」
「まあ、正直…、君に知られぬよう注意はしていた」
「やっぱり!」
城門付近で繰り広げられているここまでの会話を聞いた者達は二人はそれ相応の関係であると邪推した事だろう。
些細な嫉妬をアリーナ姫が恋人の貴族にしていると。
だが、嫉妬の内容はそのような甘いものとは違い。
「空間移動魔法が使えるなんて…!」
高魔力を有する一族の直系にも関わらず先天的に魔力の無いアリーナは、魔法が一切使えない。
その一族の一人であるアルスターが魔法を使えるのは当然かも知れないが、まさか高難度の魔法である空間移動魔法ルーラが使える程の魔力を有するとは思ってもいなかった。彼が魔法を使う姿を一度も見た事がないからだ。
「貴方、やっぱりかなりの魔力を持っているんじゃないの?」
アリーナは疑いの眼差しを向ける。
サントハイム王家の一族で、特に高魔力を有する男子は『予知夢』という能力を授かる事がある。夢の形で未来を視る力なのだが、アリーナの父王ルシオはその力に秀でている。
このアルスターも予知夢を視る事はアリーナも知っている。だがどの程度視る力があるのかは知らない。その未来予知が朝食の献立程度では無く政局を左右する程のものであるなら、直系に能力者の血を入れる為、アリーナは直ぐに彼と婚約させられてしまうだろう。
アルスターもきっとそれは解っているだろうが。
「…さあ、どうだろうね」
明言しないアルスターにアリーナは唇を尖らせた。
「また誤魔化す」
「それより急ぐのだが」
アルスターは封蝋のある書をちらりと見せる。
サントハイム王の印。ルシオから直々に頼まれた書簡を移民の街の管理者ホフマンに届ける仕事があるのだ。
内密に確実に届ける為には空間移動魔法が必須。その為、移動魔法が使える者の同行をルシオは勧めたのだが、アルスターが自分で使えるからと断っていた所をアリーナに見つかり…今に至る。
「だから私も行くって言ってるじゃない」
にっこりと笑うアリーナにアルスターは芝居掛かった仕草で頭を抱え溜息を吐いた。
「君を断り無く城から出せば、我が友人の怒りを買う」
「『我が友人』って、クリフトの事?」
アリーナは少し莫迦にしたように笑う。
「それ、アルスターが一方的に思っているだけでしょ」
「…それは言いっこ無しだ」
信心深いアルスターは次期教父クリフトに心酔している。参内の機会があれば彼を訪ねるのだが、向こうはアルスターに気を許してはいない。
その理由は敵対勢力の息子であるから、というよりは、アリーナの婿候補である所が大きいのではとアルスターは睨んでいる。
クリフトは口を割らないが、彼は随分と昔からアリーナに惚れている。
この可愛らしく、良くも悪くも真っ直ぐなアリーナの事はどちらかと言えばアルスターも好きなのだが、彼女の婿の座と彼の友人の座、どちらを取るかと問われれば迷わず後者を選ぶ。その位アルスターはクリフトを気に入っているのだが、当の本人には全く伝わらない片思いだ。
「全く…、私は彼にこんなに尽くしているのに」
アルスターが予知夢の能力の強弱を明言しない理由はクリフトにある。
クリフトが愛するアリーナは、いつ結婚してもおかしくない年頃だ。サントハイムも今まで婿候補を擁立してきたが、決め手には欠けている。その理由がアルスターの予知夢の能力なのだ。
アルスターに強い予知能力があれば迷わずアルスターとアリーナの結婚が決まる。それ位政に関わる者達は予知夢を視る王を求めている。
だが、力が弱いのなら他国の有力な王子との結婚の方がサントハイムとしてはお得だ。
アルスターの能力の強弱に結論が出れば、保留状態のアリーナの結婚話はすぐに動くだろう。
逆に考えれば、アルスターがはっきりさせないお陰でアリーナは結婚を先延ばしに出来ている状況なのだ。
勿論いつまでも続かないとは思うが、アリーナとの結婚を望む父に睨まれながらも時間稼ぎの役を買っているのだ、少しは感謝して欲しいとアルスターが思うのは無理もない。
「何か言った?」
アリーナが聞き返すもアルスターは肩を竦めるに留めた。


・・・「とある男の嫁探し その2」に続きます。


Calender

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阿月さくら

Author:阿月さくら
ドラクエ4のサントハイムを中心とした二次小説を書いています。
SINCE.08/03/05

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