ドラゴンクエスト4のクリフト×アリーナ(クリアリ)を中心とした二次創作サイトです。
神学の課題を胸に抱えたサントハイムの世継ぎの姫君アリーナは、ほんの少し小走りで歩いていた。
此処は武器商人トルネコが私財を投じて作った船の中。船底近くの船室を繋ぐ廊下は狭いが、目を楽しませる趣味の良い壁紙や調度品はそれを決して不快にはさせない。
…大丈夫よね?
アリーナは分厚い課題を見下ろした。
今年度の神学の講義の総まとめであるこの課題は、クリフトが十歳の時、神官職の二級への昇級試験を受ける許可を得る為に取り組んだ課題と同じらしい。
、普通の神官ならば二十歳前で受けてもおかしくない課題らしく、幾らサントハイムの天才の異名を持つクリフトから指導を受けているとは言っても、神官でも無い十八の自分には充分に手強いものであった。
十歳の時のクリフトの頭脳にも全く及ばない自分だが、かなりの時間を費やした論文だ、きっと合格点に届いている…筈。
抱える腕に力を入れ、下唇を噛む。
きっと認めて貰える。
己の立場も弁えない愚かな王女も少しは心を入れ替え、変わろうとしているかと安心して貰える。
側で仕えるに足る王女であると思って貰える。
Tart 2 side.A
「……」
自然とアリーナの歩みが止まった。
「…無理よ」
少しも変わってはいないのだから。
ずっと昔から。今この瞬間も。
自分の心は彼に向いている。
臣下に対して過ぎた思いは持つなと戒めた彼は、それを疎ましく思っているに違いないのに。
クリフトの部屋の前に立ったアリーナは、小さく息を吐いた後、眉を寄せた。
「…誰か居る」
人の気配がする。恐らくは二人。一人はこの部屋の主人であるクリフトだろう、もう一人は…仲間の内の誰かに違いない。
内密な、大切な話をしているかも知れない。また後にした方が良いだろうか?
扉を叩くべきかどうか悩むアリーナの耳を思わぬ台詞が突き抜けた。
『ずっと昔から好きですよ。他の皆さんよりも…、好きだ』
…嘘っ!!
どくんと心臓が大きく音を立てる。アリーナは震える膝を支えながら壁に手をついた。
何、今のは?!
今の声は間違いなくクリフト。
部屋の中に居る誰かに向かって言った、クリフトの先程の言葉は。
今の言葉は、告白…?
クリフトには、好きな人が居る…?!
逃げ出したい衝動に駆られたアリーナはくるりと背を向けた。
何故涙が出るのだろう?
悔しいような気持ちで胸が一杯になるのだろう?
自室に戻る廊下を足早に歩きながら、アリーナは目元に滲む涙を指の腹で拭う。
私はクリフトに愛してももらえないから?
私が愛するだけでもクリフトには迷惑だから?
誰か一人を愛する事など無いと言ったのは嘘で、裏切られたと感じたから?
「駄目よ…そんな気持ちを持ったら」
クリフトが側に居る価値のある王女になれれば、自分は満足では無かったのか?
愛する事も止められ無い、駄目な王女の癖に。
愛されたいと望むのか。
アリーナは袖で涙を拭いた後、小さく息を吐いた。
受け入れなければ。祝福しなければ。
クリフトに想う人が居るのなら、自分は主人として応援し、背中を押してやらねばならない。
アリーナは立ち止まる。
「相手は…誰だったのかしら?」
自分以外の女性は、二人。
モンバーバラの舞姫マーニャと占術師ミネア。
何方も素敵な、誰もが振り返る美女だ、クリフトが想いを寄せてもおかしくは無い。
ちゃんと相手を確かめておけば良かった。
これでは応援する事も出来ない。
アリーナは自身の愚かさに溜息を吐いた後、再びクリフトの部屋の方へと向かって歩き始めた。
・・・「ずっと昔から。 アリーナ編その2」に続きます。
此処は武器商人トルネコが私財を投じて作った船の中。船底近くの船室を繋ぐ廊下は狭いが、目を楽しませる趣味の良い壁紙や調度品はそれを決して不快にはさせない。
…大丈夫よね?
アリーナは分厚い課題を見下ろした。
今年度の神学の講義の総まとめであるこの課題は、クリフトが十歳の時、神官職の二級への昇級試験を受ける許可を得る為に取り組んだ課題と同じらしい。
、普通の神官ならば二十歳前で受けてもおかしくない課題らしく、幾らサントハイムの天才の異名を持つクリフトから指導を受けているとは言っても、神官でも無い十八の自分には充分に手強いものであった。
十歳の時のクリフトの頭脳にも全く及ばない自分だが、かなりの時間を費やした論文だ、きっと合格点に届いている…筈。
抱える腕に力を入れ、下唇を噛む。
きっと認めて貰える。
己の立場も弁えない愚かな王女も少しは心を入れ替え、変わろうとしているかと安心して貰える。
側で仕えるに足る王女であると思って貰える。
Tart 2 side.A
「……」
自然とアリーナの歩みが止まった。
「…無理よ」
少しも変わってはいないのだから。
ずっと昔から。今この瞬間も。
自分の心は彼に向いている。
臣下に対して過ぎた思いは持つなと戒めた彼は、それを疎ましく思っているに違いないのに。
クリフトの部屋の前に立ったアリーナは、小さく息を吐いた後、眉を寄せた。
「…誰か居る」
人の気配がする。恐らくは二人。一人はこの部屋の主人であるクリフトだろう、もう一人は…仲間の内の誰かに違いない。
内密な、大切な話をしているかも知れない。また後にした方が良いだろうか?
扉を叩くべきかどうか悩むアリーナの耳を思わぬ台詞が突き抜けた。
『ずっと昔から好きですよ。他の皆さんよりも…、好きだ』
…嘘っ!!
どくんと心臓が大きく音を立てる。アリーナは震える膝を支えながら壁に手をついた。
何、今のは?!
今の声は間違いなくクリフト。
部屋の中に居る誰かに向かって言った、クリフトの先程の言葉は。
今の言葉は、告白…?
クリフトには、好きな人が居る…?!
逃げ出したい衝動に駆られたアリーナはくるりと背を向けた。
何故涙が出るのだろう?
悔しいような気持ちで胸が一杯になるのだろう?
自室に戻る廊下を足早に歩きながら、アリーナは目元に滲む涙を指の腹で拭う。
私はクリフトに愛してももらえないから?
私が愛するだけでもクリフトには迷惑だから?
誰か一人を愛する事など無いと言ったのは嘘で、裏切られたと感じたから?
「駄目よ…そんな気持ちを持ったら」
クリフトが側に居る価値のある王女になれれば、自分は満足では無かったのか?
愛する事も止められ無い、駄目な王女の癖に。
愛されたいと望むのか。
アリーナは袖で涙を拭いた後、小さく息を吐いた。
受け入れなければ。祝福しなければ。
クリフトに想う人が居るのなら、自分は主人として応援し、背中を押してやらねばならない。
アリーナは立ち止まる。
「相手は…誰だったのかしら?」
自分以外の女性は、二人。
モンバーバラの舞姫マーニャと占術師ミネア。
何方も素敵な、誰もが振り返る美女だ、クリフトが想いを寄せてもおかしくは無い。
ちゃんと相手を確かめておけば良かった。
これでは応援する事も出来ない。
アリーナは自身の愚かさに溜息を吐いた後、再びクリフトの部屋の方へと向かって歩き始めた。
・・・「ずっと昔から。 アリーナ編その2」に続きます。