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ドラゴンクエスト4のクリフト×アリーナ(クリアリ)を中心とした二次創作サイトです。
変わらないまま、そばに居て。
「二年振りにクリフト様にお会いしましたけど」
私の爪の手入れをしてくれている女官のメアリーは一度言葉を切った後、夢見るような表情で続けた。
「以前よりも素敵な男性になられていらっしゃいましたわ」
「…そうかしら?」
突然話題の中心となった恋しい人の名に、私は動揺を隠すように咳払いをする。
「何処も変わりないと思うけど?」
「姫様はずっと一緒にいらしたのに分かりませんの?」
「分からないわ」
分かっているわよ、あなたに言われなくても。
我を通さない彼は少し頼りない印象もあったけど、強くなった。
身体は勿論、心も。
自信。彼は眩しい位に自信に溢れている。未来を見据え、最善の行動と努力を惜しまない。
その姿は、どんな女性の目にも魅力的な存在として映る事だろう。
「えぇっ?分かりませんの?」
メアリーは少し怒ったような声を上げた。
「まあまあ、メアリー。近くにいると案外気付かないものよ」
女官長リルアは苦笑しながら私の顔を覗き込む。
「ねえ、姫様」
私が小さい頃から女官として支えてくれるこの女性の目はお見通しとばかりに輝いている。
「そうかもね」
素っ気無さを装う私の返答に笑みを返した女官長にメアリーは質問する。
「女官長様、クリフト様はどんな女性がお好みでいらっしゃるのかしら?」
春の終わりに参内したばかりの年若いメアリーは、良くも悪くも気安い。まだまだ学ぶべき事の多い彼女にきつい一瞥をくれたリルアは、そのまま窘める。
「メアリー、姫様の御前ですよ」
「…はあい」
メアリーは肩を竦め、不服そうに頷く。反省は少しもしていない、昔の私を見るようだ。私は思わず苦笑を零した。
「まあ、良いじゃない、リルア」
「姫様、甘やかすとメアリーの為になりません。使用人の質の低下は姫様への評価の低下にも繋がります。姫様も主人として毅然とした態度を持って接していただかねばなりません」
リルアの矛先は私に向けられる、今度は私が肩を竦める番となった。
「分かっているわ。此処だけの話で」
私の言葉にメアリーの表情は明るくなる。
「無礼講という事ですね、姫様!」
「え、ええ、まあ。そうかしらね」
「ではでは、姫様!クリフト様はどんな女性がお好みでいらっしゃるか御存知ですか?」
え、リルアだけでなく私にも聞くの?思わずリルアの方へと瞳を向けると、
「メアリー、無礼にも程があります。姫様だけでなくクリフト様にも失礼ですよ」
リルアはすかさず助け船を出した。
「ふふっ、そうですよね」
メアリーは笑うと爪の先に香料を塗り始める。
「最近女官達の間ではその話題になる事が多くて、つい」
そんなにクリフトの事が話題に上るの?私は少し心配になる。
「どんな話をしているの?」
「あ、姫様も興味を持たれましたか?」
嬉々として再びクリフトの話に戻すメアリーの後ろで深い溜息を吐くリルアの姿が見え、私は苦笑いで頷いた。
「まあ、少しはね。クリフトは私の一の臣下だもの、悪い噂ならきちんと対処しないと」
「上々の話しかありませんけどね。何処かの貴族の公女様が御執心だとか何とかという噂が多くて、あの公女様にはクリフト様は釣り合わないとか何とか…。それはもう好き勝手な事を言ってますね」
「…どんな女性がクリフトに相応しいと思っているの?」
「皆の意見としては、知的でお淑やかな綺麗な女性、って所でしょうか」
知的でお淑やかな綺麗な女性…。
「さ、出来上がりましたよ、姫様!これでどんな殿方が手を差し伸べられようと大丈夫です」
メアリーの太鼓判にリルアは苦笑する。
「メアリー、あなたはまだまだ女官の心得がなっていないけど、指先の手入れだけは何処に出しても恥ずかしくないわね」
「えー、その技術以外は恥ずかしいみたいに聞こえますー!」
「みたい、じゃなくて、その通りよ」
リルアの評価にメアリーは情けない表情を浮かべる。申し訳なかったけれど、私は大笑いをし、それが下品だとリルアに叱られる羽目となった。

「知的で、お淑やかで、綺麗な女性…」
公務を終えた私は謁見の間から退出しながら、メアリーの言葉を思い出していた。
それが皆が思い描く、クリフトに相応しい女性像。
「…私と真逆じゃない」
呟きと同時に歩幅が小さくなる。すれ違う人達への会釈も行儀作法の試験のように丁寧に緊張感を持って行う。
そうしながら、私はクリフトの執務室を目指した。

I like her very much just as she is.

「姫様、御機嫌麗しゅう御座いますか?」
執務室に入って来た私を出迎えたクリフトは、嬉しそうな笑顔で私に手を差し伸べる。
「有難う」
私が優雅に指先のみを乗せるとクリフトは少し不思議そうに首を傾げた。
「…何かありましたか?」
クリフトは探るような瞳で私を見つめてくる。
「いいえ、何も」
微笑む私にクリフトはあからさまに眉を潜めた。
「…絶対に何かありましたね。貴女らしくない」
「……」
何よ。何も知らないくせに。
皆はね、あなたに相応しい女性は、知的で、お淑やかで、綺麗な女性だって話をしているの。
私とは真逆なの。
悔しいけど、私もそんな女性の方があなたにはしっくり来ると思うの。
だからね、私らしくしていたら、あなたに相応しい女性にはなれないじゃない。
知的で、お淑やかで、綺麗な女性が現れたら、私なんて見向きもされなくなっちゃうんじゃないの?
「だって。今のままだと私はクリフトと釣り合わないもの」
「…?」
「皆ね、クリフトは以前と比べて素敵な男性になったって。そんなクリフトには知的でお淑やかな綺麗な女性が合うって言ってるの。だから、私は変わらないと……、って」
私は台詞の途中で閉口する。クリフトったら、お腹を抱えて笑うんだもの。
「…くははっ!何があったのかと心配すれば、そのような事ですか!」
「そのような事って…、何よ!深刻よ、私にとっては!」
「…変わらないで下さい」
クリフトは静かに微笑むと手の平にちょこんと乗っていた私の指をしっかりと握る。
「私はそのままの貴女が好きなのですから」
その言葉に反応した心が大きく歓びの声を上げる。私は悟られまいと態と拗ねたように唇を尖らせた。
「でも…、今のままだと笑われちゃうわ。知性の欠片も無いお転婆姫はクリフトには釣り合わないって」
「何を仰るのです、釣り合わないのは私の方ですよ。だけど貴女は何も持っていない今の私を愛してくれる、それが私に無二の自信を与える。まだまだ先を行く貴女を得ようと足掻く私に自分の能力以上の力を発揮させる」
「クリフト…」
眩しい、私にはやっぱり勿体無い人。私は小さく首を横に振る。
「駄目よ、私も変わらないと駄目。あなたに置いて行かれちゃう」
「ふふっ、私が貴女に追い付こうとしていると申し上げているのに。では、姫様。どうか変わらない所をこのクリフトの為に残してやってもらえませんか?」
私が促すとクリフトはこの上無く甘い声で私に囁いた。
「私が愛してやまない、そして、こんな私を愛してくれる、貴女の心を」
そんなの、頼まれなくても。
私の心はずっと昔から、変わらないままあなたの物よ。


end.



久々の短編「変わらないまま、そばに居て」でした。
城に戻って割と間もない頃で、アリーナ姫目線のお話です。

ただいちゃつく二人のお話が書きたかった。春だし。

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阿月さくら

Author:阿月さくら
ドラクエ4のサントハイムを中心とした二次小説を書いています。
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