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ドラゴンクエスト4のクリフト×アリーナ(クリアリ)を中心とした二次創作サイトです。
恋する人の事情
本日の戦闘は魔法戦が多く、ブライとマーニャの魔力が早々に切れた為、まだ昼を少し過ぎたばかりだと云うのに一行は宿場町に滞在していた。
小さな宿場町だが、雰囲気のある店や雑貨が多い。「此処は当たりだったわね」とマーニャはご機嫌だった。
疲労感のあるブライを宿に残し、アリーナとクリフトは町を散策している。途中、雑貨屋を覗いているマーニャやミネアを見かけたりした、各々自由時間を満喫しているらしい。
変わったグラスで作られたランプが沢山吊るされた、賑わうカフェに吸い寄せられるように入った二人は、席に案内されるや否や、直ぐに入店を後悔した。
隣に座っていた男女は恋人同士だったらしく、机の上で互いに手を取り、愛を囁き合っている。
だからと言って、他に空いている席も無く、何も注文もせずに外に出る訳には行かない。仕方なく二人は腰掛けた。

my heart

「紅茶を二つ。此方の女性には甘い物も」
クリフトが注文すると店員は和かに頷き、台所へと引っ込む。
その背を何となく見送っていたクリフトにアリーナが声を掛けた。
「…ああいう感じの女性が好みなの?」
別に嫉妬した訳ではない。クリフトが見ようと思って見ていた訳では無い事にも気づいていたが、アリーナは話題作りに言ってみただけである。
「え?」
クリフトは直ぐには質問の意味が解らなかったようで、暫く考えた後、答えた。
「…んー、どんな顔をされていたか、覚えていないんですけど」
クリフトは苦笑いをする。先程の店員に失礼な言い方であるのを自覚しながら。
「そうなの?」
「ああ、スタイルは良かったかも知れませんね。後ろ姿は何となく覚えています」
アリーナは笑いながら頬杖をついた。
「…クリフトって、顔よりも身体なんだ?」
「誤解を招く言い回しですね。淑女はそのような事を仰るべきではありません」
クリフトは嫌そうな顔でアリーナを窘める。
意味をきちんと理解した上で言っている訳では無いのだろうが、マーニャの影響を少しずつ受けている事に危機感を募らせるこの頃である。
「…はーい」
アリーナが肩を竦めると先程の店員が紅茶を二つとシフォンケーキを持って来た。
「この地方で有名な木の実を混ぜてあるんですよ」
店員の言葉にアリーナは笑みを浮かべる。
「楽しみだわ。色んな地で美味しい物が食べられるのは、旅の醍醐味よね」
「皆さんそう仰いますね。お口に合えば良いのですが。…では、ごゆっくり。この町のひと時をお楽しみ下さいね」
店員が立ち去った後、アリーナは前屈みになり、小声で尋ねる。
「ね、顔はどうだった?」
「え?…見ていませんでした」
クリフトは紅茶を手に取りながら答えた。
「この紅茶、香りが良いですよ」
アリーナは不満そうに溜息を吐く。
「少しは女性にも興味を持ってよ」
「そう申されましても…」
紅茶を口に運ぶクリフトが苦笑を零したその時。

『僕は君の事しか見えないんだ』

思わず紅茶を噴き出しそうになるのをクリフトは辛うじて堪えた。唖然としながらアリーナは隣の席の男性に目を向けている。
…何というタイミングでそんな台詞を。
アリーナに想いを寄せ続けているクリフトにとって、他の女性に目が行かない理由は隣の男性が言った言葉そのものの為、何となく恥ずかしい。
「アリーナ様、あまり見ては失礼ですよ…」
クリフトが小声で囁くとアリーナはハッと我に返りフォークを手に取った。
「ごめんなさい、ちょっと吃驚しちゃって」
私はかなり吃驚した。クリフトは同意するように小さく頷く。
「…それよりアリーナ様、ケーキのお味は如何です?お好きな味なら良いのですが」
妙な空気を誤魔化すようにクリフトが尋ねるとケーキを頬張るアリーナは笑顔を見せた。
「うん、美味しい!私ね」

『あなたの事が好きなの』

隣の女性の告白にアリーナが固まる。フォークに刺さっていたシフォンケーキがポロリと皿の上に落ちた。
「ち、違っ…、ケーキが!このケーキのような控え目な甘みが好きなの!」
間違って告白してしまったような羞恥心を覚えながら、アリーナは頬を染める。
クリフトも瞳を泳がせながら頷いた。
「解っています。私達はケーキのお話をしているのですから」
「そ、そうよね」
アリーナも頷き返し、「自分達の会話に集中、集中…!」と心に言い聞かせる。
「クリフトも食べてみる?ほら、最後のひと口だよ」
「いえ、貴女が召し上がっていらっしゃる物を戴く訳には参りません」
「そんなお堅い事を言わずに」
アリーナはフォークにケーキを突き刺し、差し出した。
「其れとも私なんかが食べた物は要らない?」
「いえ、そのような事は…、私は…」
ケーキを差し出すアリーナの可愛らしい仕草に思わず頬を緩めながら、クリフトは見つめる。

『君が居れば、僕は何も要らないよ』

その台詞を聞いたアリーナが瞳を大きくし、クリフトは顔を真っ赤に染めた。
「…ケッ、ケーキが要ります!戴きますっ!!」
アリーナの手からやや強引にフォークを取り、口に放り込む。
「う、うん…、ケーキね」
アリーナはややぎこちなく笑みを見せた。
「ええと……、美味しい?」
「…はい」
クリフトは頷いたものの、正直、味を楽しむ余裕は無い。


…居た堪れない。
アリーナとクリフトは難しい表情を浮かべ、一方は冷たくなり始めた紅茶を口に含み、もう一方は本日の天気でも窺うように空へと瞳を向けた。

『ずっと昔から、君の事を愛していたんだ』

…落ち着け。
まるで私の感情を代弁しているようだが。
クリフトは流れる雲を見つめたまま己に言い聞かせる。
隣に座っている男が自分の感情を目の前の女性に伝えているだけだ。
動揺する必要等、微塵も無い。

『私も…思い出せない位、前からずっと好きだった』

…大丈夫。
私が言っている訳では無い。
アリーナは息を吐き出しながら紅茶の茶器をゆっくりと置いた。
隣に座る女性が自分の感情を目の前の男性に語っているだけ。
アリーナはちらりとクリフトを窺う。
腹が立つ位、隣に無関心だわ。
クリフトも私に少しは興味を持ってくれたら嬉しいのに。
「…このまま北上するのかしらね?」
アリーナの問いにクリフトは曖昧に頷いた。
現在一行は、キングレオに向かっている。
ミネアの話によると此処は丁度モンバーバラとコーミズ村の中間付近らしい。
「まだはっきりとは決まっていませんが、コーミズ村に寄るかも知れません。このまま…」

『君を一人連れ去る事が出来れば良いのに』

…怯むな。
一瞬固まるも、クリフトは己を叱咤し、続ける。
「…このまま全員で北上し、直接キングレオを目指すかも知れませんが」
進化の秘法を操り、魔物と化したキングレオ王を野放しにしておく訳には行かない。一刻も早くキングレオを倒したいが、コーミズ村はマーニャ達の故郷。追われるようにこの国を出てから一度も墓参りをしていないという。
二人は今仇敵を前にして少し地に足が着いていない状態にある。英気を養う為にも冷静さを取り戻す為にも寄るべきかも知れない。
「コーミズ村に寄ってもそれ程遠回りにはならない筈よね?…キングレオ王の事は気になるけど、先ずはお墓参りをするべきだと思う。『絶対に倒すから守ってあげて欲しい』って二人のお父様にお願いしないとね」
アリーナは背凭れに身体を預け、独り言のように呟く。
「…私達も……、長くサントハイムに戻っていないわね」
「……はい」
「クリフト、…私ね」
そして、神妙に頷くクリフトを見つめた。

『どんなに辛くても私は…生まれ育ったこの地を棄てる事は出来ない』

…その通りよ。アリーナは小さく笑う。
隣の女性も私と同じなのね。
予知夢を視ない、役立たずの王女。
その重圧に耐えられず、飛び出した故郷。
父王や城の皆を失い、痛感した。
私は王女なのだ。
サントハイムからは逃げられない、逃げる訳には行かない。
見棄てる事など、出来ない。
「………」
苦しそうに瞳を閉じるアリーナを見つめたまま、クリフトは膝の上でぎゅっと拳を握る。

『…解ってる、僕は君を守り続けるよ。身の程知らずと罵られようと、例え君との未来が交わる事は無くても、其れが僕の愛だから』

……右に同じ。クリフトは小さく笑った。
どうやら隣の男性も道ならぬ恋をしているようだ。
アリーナの手を包むように握り、囁く。
「全てを取り戻し、帰りましょう。何があろうと、私は貴女と共にあります」
「クリフト…」
アリーナは微笑み、クリフトの手を握り返しながら頷いた。

「…『其れが僕の愛』、か……」
宿へと続く道を歩きながら、アリーナは呟いた。
「上手く行くと良いね、さっきの二人」
クリフトは歩みを止め、アリーナの背に問いかける。
「…姫様は赦されると思いますか?」
身分無き男がその身に相応しく無い想いを抱く事を神は赦すだろうか?
「……どういう意味?」
立ち止まったクリフトをアリーナは振り返り、見つめた。
クリフトの表情は強張り、瞳には暗い色を落としている。
「彼が犯した、身の程知らずな恋を神は赦すのでしょうか」
「…赦されるわよ」
アリーナはしっかりとクリフトの瞳を見返しながら答えた。
「だって、彼女もまた彼を愛しているんですもの」
「…そうですね」
クリフトは瞳を伏せると小さく笑みを浮かべる。
「どのような立場にあろうと、二人が想い合っているのは真実ですから」
アリーナは幾らか表情を和らげたクリフトに背を向けながら安堵の息を吐く。
「うん」
そして自分に言い聞かせるように言葉を紡いだ。

「其処に真実の愛が交わされるなら、どんな立場の者達であろうと神様は赦して下さる」


end.



長めの短編「恋する人の事情」でした。
かなり前に書いたお話なのですが、何となくお蔵入り状態となって眠っていたお話です。

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Author:阿月さくら
ドラクエ4のサントハイムを中心とした二次小説を書いています。
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