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ドラゴンクエスト4のクリフト×アリーナ(クリアリ)を中心とした二次創作サイトです。
背中の傷
本日は休息日である。
天空の勇者率いる一行は現在リバーサイドという街に向かっている最中だ。
急ぐ旅ではあるものの、集中力を切らさぬよう戦う為には適度な休息は必要である。
だが、此処は海上。必要最低限の物しか無い。
となれば、休息日と言っても各々鍛錬や勉学に勤しむ事となり。
「…四百四十八、…四百四十九」
頬杖をついて数を数えているのは、サントハイムの姫君アリーナ。
その目の前では上半身裸の青年が刀を振っている。
「……四百九十九、…五百!…終了よ、お疲れ様!」
五百回を告げる王女の声で、青年は息を吐き出しながら刀を下ろし、汗で張り付く新緑の髪を掻き上げた。
「少し休憩したら、また五百な?」
天空の勇者と呼ばれ、神より与えられた神器と魔法を操る事が出来るこの青年は、努力を惜しまない。この若き勇者に歴戦の戦士や稀代の老魔術師が一目置き、己が培ってきたものを与えようとするのは、彼に押し付けられた肩書の為だけでは無いのだろう。
「うん。…ねえ、ペヴァル。その後は私との組み手だよ?」
鍛錬に励む事には勇者に引けを取らないアリーナの言葉にペヴァルと呼ばれた青年は苦笑いを浮かべる。
可愛らしい容姿を持つ姫君ではあるが、その内に秘める途轍も無い力と俊敏さには、如何に努力を積んだ所で勝る事は無いだろう。
「解ってるって!」
流れる汗を拭っていたペヴァルは、自分をまじまじと見つめるアリーナの視線に気づくと居心地が悪そうに身動ぎした。
「それより、何見てるんだよ」
「え?あなたの身体だけど?」
顔色一つ変えず、姫君は返す。
「凄く綺麗ね、あなたの身体」

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筋肉の付いた鋼のような身体は、女の自分がいかに鍛えようとも得る事は叶わない。だが、自然と羨ましいとは思わない。それどころか、サントハイムでは異性の半裸を見る事など有り得ないというのに羞恥も感じない。城の女官達は偶然年若い兵達の身体を見たと恥ずかしそうに騒いでいたものだというのに。
ただ美しさに圧倒される。
アリーナがそんな事を考えているとは思っていない勇者は、アリーナも男の身体とかに興味のあるお年頃なのかな、と邪まな想像を膨らませていた。
「なんなら抱き締めてあげても良いぜ?どんな感じか興味あるだろ?」
「え?それは興味無い」
揶揄う男に冷たい反応を返した後、アリーナは納得したように頷く。
「そっか…、現実味の無い事を言われたから気付いたわ。あなたの身体って、彫刻みたいに現実味が無い身体なんだわ。美術品と大差無い」
「…あ、そう」
…この愛らしいお姫様には、俺の身体は人間扱いもされないのか。アリーナに背を向けるとペヴァルは溜息を吐き、再び汗を拭き始めた。
「でもやっぱり彫刻とは違うわね」
「…?」
呟く王女を肩越しに振り返る。
「あなたの身体には沢山の傷がある。無いのは背中だけ」
ペヴァルは眉を寄せながら己の腕や胸を眺めた。
確かに大きいものから小さいもの、古いものから新しいものまで、様々な傷が在る。
「確かに背中は気を付けているかも。中央大陸では『戦士にとって背中の傷は恥』って言われているからな」
「…何で恥なの?」
「背中を斬られるという事は、敵に背を向け逃げようとしたからだ、と言われるかららしいよ」
「ふうん…」
中央大陸は昔からどの国も争いが絶えない。
国と共に生き、名誉と共に死す。それも美徳なのだろう。
大陸丸ごと一つが自国であり、生命の尊さを謳うサントハイムには無い価値観だ。
「姫はクリフトの裸とか見た事ある?」
「えっ!な、無いに決まってるでしょ!」
アリーナは染まる頬を隠すように手で押さえた。クリフトの身体を想像しただけでも声が上擦る。勇者の身体が彫刻のようだから何も感じないだけだと思ったが、彼に恋をしていない事も一因なのかも知れない。
「そっか」
そんな王女の反応を楽しみながら足元に転がった刀を拾うと、翠の瞳を細めて小さく笑う。
「クリフトは背中ばっかり傷があるんだよ」
「背中ばかり?」
アリーナは瞳を瞬かせる。
「そう。結構凄い傷もあるんだぜ」
ペヴァルの言葉を聞きながら、アリーナは複雑な表情を浮かべた。
それって、クリフトが敵に背を向けてばかり…という事よね?
その心の声が聞こえたのか、ペヴァルは再び口を開く。
「勿論、ブランカやバトランドで言われるような敵前逃亡をしたからじゃ無い」
「…どういう事?」
「名誉の傷」
「…『名誉の傷』?」
「そう。自分の背にある傷は『名誉の傷』だと誇らしそうに語っていた。この傷は姫を守れた証なんだと」
「あ……、私、を……」
癒しの魔法と槍を振るう神官の姿が脳裏に鮮やかに蘇る。
身を武器として戦う私を彼が自身を盾にして守った証。
彼は痛みに指先を震えさせながら苦悶の表情を浮かべるものの、必ず『お怪我はありませんか?』と訊ね、怪我が無い事を確認すると安堵の笑みを浮かべた。
自分は酷い怪我をしている筈なのに、傷の無い私を見て安心する。
私に心配をさせまいと傷が見えぬよう、私を正面から見つめたまま微笑む。
私にそんな価値なんて、無いのに。
「莫迦ね、本当」
「俺もそう思うよ」
泣きそうな笑顔のアリーナに翠の瞳を細めて微笑む。
「あいつは本当に君の事が大切なんだよ。主人だからかも知れない、幼馴染、友人だからかも知れない。俺や君には解らないもっと別な理由かも。だけど、どんな理由であろうとあいつにとって君は命を張る価値のある女の子なんだよ。あいつの価値観を理解しなくてもいいから、受け入れてやってくれ」


「姫様、そろそろお茶の時間に致しませ…ん」
甲板に現れたクリフトは、言い終わらぬ内に表情を険しくした。責めるような瞳は勇者に向けられている。
「……ペヴァル。姫様の御前で裸を晒すなんて」
「暑いんだから仕方ないだろ?」
「女性の前で裸を晒すのはサントハイムでは御法度です!」
クリフトは無造作に脱ぎ捨ててある青年の上着を手に取ると乱暴に投げつけた。
「うるせー、此処はサントハイムじゃねぇよ。それにアリーナ姫は俺の裸を見て喜んでたし」
「喜んで…?」
「そう。お前も見せたら?」
「…ひ、姫様がそのようなものを見て喜ぶ筈がないでしょう!莫迦莫迦しい!」
口論する男達を見ていたアリーナはクリフトに近づくとその背中に抱きついた。
「…ありがとう、クリフト」
「え?ちょっ…、姫様!……え?」
訳が解らない。腰に回された華奢な腕を呆然と見下ろしながら目紛しく考える。が、やはり何も思い当たらない。
見兼ねたペヴァルが答えを口にした。
「お前の背中の傷の話をしたんだよ」
「背中の傷?」
クリフトはそっと背後のアリーナに目を向けた。額を背に押し付けるようにして抱き付いている為、その表情は見えない。
クリフトは息を吐きながら正面を向いた。
「余計な事を…、姫様は御存知なくても良かったのに」
「私は知る事が出来て良かった」
アリーナは腕に力を入れる。
「彼が教えてくれなきゃ、私、あなたにどれだけ大切に守られて来たのか知る事が出来無かった!」
「姫様…」
クリフトはアリーナの手に己の手を添えると微笑んだ。
「それでも貴女は知らなくても良いのですよ」
「……」
上着を羽織り一息吐くと、愛情溢れる瞳で王女の手を見つめるクリフトを見ながら勇者は微笑んだ。
主人だからじゃ無い。幼馴染、友人だからでも無い。
アリーナ姫。
こいつは本当に君の事が大切なんだよ。
愛している女の子だから、命を張る価値があるんだよ。
理解出来なくてもいい。こいつだって君の立場は解ってる。
だけど何時か。それでも君を得たいとこいつは腹を括る時が来る。
その時まで待ってあげて欲しいんだ。
きっと呆れるくらい、君を待たせるだろうけど。
その時は笑って不器用な愛情を受け入れてあげて欲しいんだ。


end.



冒険中のお話「背中の傷」でした。

最初の構成では勇者君とアリーナ姫しか登場しなかったのですが、クリフト君登場部分を追加してみました。

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プロフィール

阿月さくら

Author:阿月さくら
ドラクエ4のサントハイムを中心とした二次小説を書いています。
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