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ドラゴンクエスト4のクリフト×アリーナ(クリアリ)を中心とした二次創作サイトです。
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「我が城にお招き致します。其処で私に夢を語って頂きますよ、王。貴方の視る、未来の夢を」
血色の瞳は玉座から睨む紅蓮の瞳を見つめ続けたまま、笑みを浮かべた。
…魔族の王、デスピサロ。紅蓮の瞳を眇め、サントハイム王ルシオは拳を握る。
心臓が早鐘を打っていた。全ては解っていた事。それでもその圧倒的な力に対峙すれば竦む。
それでも王は抗った。
「触れるな」
小さく呟き、差し出されていた魔王の青白い手を跳ね除ける。
抗われた魔王は一瞬憤怒の表情を浮かべたが、直ぐに冷静な表情を決め込んだ。
「貴方に選択肢はありません。貴方は夢でご存知でしょう?」
魔王は気丈にも睨みつけてくるサントハイム王の手を無理やり掴むと空間移動呪文を唱え始める。
その詠唱を聞きながら王は瞳を玉座の上へと向けた。
過去と未来が現在の中で交わると云う意味を持つ、サントハイムの聖十字の紋章は静かに自分を見下ろしている。
そう、全ては夢で知っている。今この時も、この先の未来の幾許かも。
それでも、未来はまだ、何一つ決まってはいない。
……アリーナ。
そして、予知夢の力を受け継ぎ続けた紋章を見つめたまま、心の中で唱えた願いを吹き込むように小さく息を吐いた。
ブライ、クリフト。
後は、頼んだぞ。

Träumerei

   千年王国サントハイム最大の災禍が城を襲うまで、あと、三か月。

春の香りがサントハイムの大地を駆け抜けている。
執務室から抜け出し、優しい陽射しが降り注ぐ中庭でまどろんでいたサントハイム王の前に現れた、女性と見紛う容姿の男は小さく溜息を吐いた。
「全く……。書類の山を残して何処に行ったのかと思えば」
彼の名はパリス。目の前で眠るサントハイム王ルシオの幼馴染であり、宗教国家サントハイムの神教会の頂点に立つ指導者、教父と呼ばれる存在でもある。
「目を離すと貴方は何時もこの女性の傍に行ってしまう」
くすりと笑うとパリスは天使像の頬に触れた。そして、その足に頭を乗せて眠っているルシオの側にしゃがみ込む。
彼はこの天使像を気に入っている。理由は頗る簡潔、美人だからだ。そして、このように足元で眠れば天使のローブと羽根で回廊を行き交う人々の目から己を隠す事が出来る。これもルシオが此処に潜む理由の一つ。
青い長髪を背に払った後、パリスはルシオの肩を揺らした。
「ルシオ様。このような所で眠っていると御風邪を召されてしまいますよ」
「ん……、後少しだけ」
「そのような事を仰らずに。まだ本日の仕事が残っておりますので」
「今日の俺は美女のキスを貰わない限り起きないと決めているんだ」
ルシオは目を閉じたままパリスの手を払う。パリスはむっとした表情を作った後、暫し考える仕草を見せていたが、ルシオの耳に囁いた。
「ルシオ様、あんな所で美女が口付けを交わしていますよ?あ、良く見るとアリーナ姫様とクリフトのようですね」
「な、何っ?!」
ルシオは跳ね起きると周囲を見渡す。
中庭には自分達以外に誰も居らず、遠くに見える回廊を行き交う者達の姿しか無い。
その中にはルシオの愛娘アリーナの姿と、何時か王となるアリーナを支える教父となる為にパリスの教育を受けているクリフトが語らいながら歩く姿もあったが、当然の事ながら、パリスが言ったような事にはなっていない。
「ただ話をしているだけのようですね。早とちりをしてしまいました」
悪びれた様子も無くパリスが言ってのけるとルシオは低く呻いた。
「騙したな、パリス……!!」
「人聞きの悪い事を仰いますね。それに陰ではあの二人の関係も進展しているかも知れませんよ?」
「アリーナとクリフトが?…んな訳、無いだろ!アリーナの鈍さとクリフトの奥手振りは鉄板だぞ」
「解りませんよ?姫様も明日で十七歳となられるのです。十七と云えば、身体に見合うよう心もまた大人へと変化する、多感な御年頃。そろそろ御自身の恋心に気付いてもおかしくはありませんよ」
「……まあ、俺から言わせて貰えば、十七にもなろうと云う娘が自分が恋心を抱いている事に気付いていないという現実の方がおかしい。でも…、確かにお前の云う通りなのかもな」
「?」
紅蓮の瞳の中に燻る不可思議な色が淡く輝くとルシオは独り言のように呟いた。
「アリーナに変化の時が訪れようとしている」
「……」
予知。長年の経験でパリスは気付くも素知らぬ振りを決め込む。
サントハイム王はサントハイム建国の祖サントより受け継がれし予知の力を操り、国内外から『予言王』と畏敬の念を込めて呼ばれる存在だ。
サントより数えて三十一代目にあたる、サント三十一世ルシオもまた例外ではなく、数多ある未来の中から最も可能性の高い未来を夢の形で視る。
その力は強大であるが故にルシオの身体に屡変調を与えるが、これまで幾度となくサントハイムの名もなき者達を禍の淵より救っている。
だが、彼は必要以上には決して語らない。
未来は決まったものではない。濫りに恐怖を振り撒き、絶望を与える必要は無いと考えるからだ。
その逆も然りと言えよう。
「お前には以前話した筈だ、『あの未来』が、遂に始まる」
「『試練待つ、導かれし者達としての未来』」
「止めるのは難しいだろう。アリーナは誰に似たのか言い出したら聞かない所があるからな」
「誰に似たのか、ですか」
パリスは小さく苦笑した。
「そうですね、私にも解りかねます。貴方もアリーナ様の母君アリシア様も一度言い出された事は決して曲げようとはなさらなかった。良くも悪くも、今を生きる事に懸命でしたから。きっと姫様も…、今を生きるという意味を模索されていらっしゃるのでしょう」
「今を、生きる、か……」
ルシオは瞳を揺らすと腿に付いた草を払う。
「俺はあの娘の未来が大事だ。その為には今現在に干渉しなければならない」
パリスは無言のままルシオを見つめていたが、笑みを浮かべると恭しく礼をした。
「私も同意見です。未来は、今という時の積み重ねですから」


癒杖の章
1 十七歳の旅立ち

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プロフィール

阿月さくら

Author:阿月さくら
ドラクエ4のサントハイムを中心とした二次小説を書いています。
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