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ドラゴンクエスト4のクリフト×アリーナ(クリアリ)を中心とした二次創作サイトです。
6 地獄の帝王
「…なあ、何が良いと思う?」
書類の整理をしているパリスは手を休め、ルシオに目を向けた。
彼の仕事が捗るようにとこうして手伝っているというのに王は羽根ペンを器用に指先で回しながら頬杖をついている。ペンを走らせるべき公共事業の新法案に関する書類には、何の印も無い。
「…早急に取り掛かるべき公共事業ですか?」
「いや。アリーナに壊された天使像の代わりに置く像の話だ」
パリスの眉がピクリと跳ね上がる。
「必要ありません。視界を遮るあのような物は賊が潜む場所にもなり得る」
「えー?じゃあ俺の昼寝は何処でしたらいいんだよ?!」
「知りませんよ!大体、御昼寝なんて必要ありませんから!」
「…俺は夢を紡ぐのも仕事の一つなんだぞ?」
確かにその通りだ。王の眠りは予知夢を視せる。
「そ、そうかも知れませんけど…」
パリスが譲歩する素振りを見せるとルシオはニヤリと笑い、目の前の書類に自署を行った後、長椅子に転がった。
「じゃあ、寝る」
「はあっ?急ぎの案件は?」
「お前が其処にある書類に印を押しておけ。全部承認する」
「ちゃんと吟味してからでないと承認なんて…!」
書類を手に取ったパリスは口を噤む。
何時の間にか、全ての書類に自署され、必要な箇所には雑な文字だが記入もされている。
「…全く」
パリスは苦笑するとルシオの顔を覗き込んだ。小さな寝息を立てるルシオは既に夢の世界に居るようだ。
「もう何十年も一緒に居るのに今でも貴方は私を驚かせてばかりですね」
風邪を引いてはいけない。パリスが羽織っていた衣をルシオに掛けようとしたその時。
「!!」
パリスは顔を強張らせた。
強烈な魔力がルシオの身体から溢れ始める。
間違いない、予知夢を視ている。
パリスは苦しそうに眉を寄せるルシオの肩に触れ、その耳元に囁いた。
「ルシオ様、しっかりなさって下さい…!」

予知夢の中に居る事を認識しつつ、ルシオは周囲を見渡した。
「…此処は」
あれはまだ王子と呼ばれていた頃、バトランドを旅していた頃だっただろうか?
地獄の帝王エスタークの夢を視た。
此処はその時視た地獄の帝王が棲まう地下宮殿に違いない。そう理解すると同時に巨大な生物の前で跪いていた銀色の髪の美しい青年を思い出す。

「地獄の帝王…エスターク」
眠ったまま呟くルシオを見つめながらパリスは眉を寄せた。
地獄の帝王エスターク?…あの神話の物語の?

以前視た時にも解らなかった。
神が封じたというこの地下宮殿が存在する場所。
探らなければならない、エスタークが復活する時はそう遠い未来では無い筈。
そう、あの遥か昔に視た、巻き毛の我が娘と付き従う神官。それに口煩い爺さん。
この三人と俺は既に出会っている。
『姫様、平気ですか?』
クリフトが外套で口元を押さえ咳き込むアリーナに声を掛けると王女は涙目で頷いた。ブライもまた気懸りそうに王女に目を向けるも神殿のような宮殿の先に目を向ける。
『急ぐのじゃ…、儂等の身だけでなく、奴の復活も近い筈』
ブライが激しく咳き込むと、恰幅の良い商人がその身体を支えた。周囲に魔物の気配が立ち込め、各々が緊張した面持ちで周りに目を向ける。
「導かれし者達」
彼等に伝えなければならない。アリーナ、クリフト、ブライを含む八人の導かれし者達に。

「この地下宮殿は…何処に」
ルシオの呟きと共に更に魔力が高まる。パリスは青褪め、ルシオの肩を揺すった。
「いけません、それ以上予知夢を視ては貴方が壊れてしまう!ルシオ様、目を覚まして!」
こんな時に老師が居ないなんて。
常ならルシオが無理をしそうな状態となれば、ブライが魔力吸引魔法を使って無理矢理ルシオを予知夢から解放させる。
だが、その魔法は古代魔法であり、パリスには使えない。

戦うアリーナ達を振り払う様に駆け、宮殿の最奥に辿り着いたルシオは、巨大な玉座に目を向けると顔を強張らせる。
二振りの剣を持つ、神と対等の力を持つ帝王は、座したまま瞳を開いた。
『良くぞお目覚めになられました』
巨大な生物の前で跪いていた銀色の髪の美しい青年が顔を上げ、微笑む。
何時かも視た、麗しくも禍々しい青年。
『地獄の帝王エスターク様』
立ち上がったエスタークが吼えると同時にルシオは叫んだ。
「復活なんぞ、させるものかっ!」
その瞬間、ルシオはサントハイム城の玉座に座していた。
別の未来の夢に…変わった。ルシオは俯き、ぎりりと歯軋りをする。まだエスタークの居場所を突き止めていないのに。
…ギ、ギリリリ。玉座の間の大扉を開く音にルシオははっと顔を上げた。
『私の名はデスピサロ。古より人に恐れられし魔王の位を継ぎし者』
静寂が支配する城の中、魔王と名乗った青年の足音が高く響く。
『こんにちは、サントハイム王。お招き有難う御座います』
魔王、デスピサロ。エスタークの前で傅いて居た銀髪の麗しき青年。
ルシオは青年の片方の手に目を向けた。あの黒い石は何だ?
あの石から人の魔力を感じる。城の煩い大臣や頼もしい神騎兵達、ゴン爺や可愛い女官達、そして、パリス。
ザワリ、と背に悪寒が走る。まさか。
『貴方に死なれては困ります。私は貴方が必要なだけなので、この城ひとつで手を打ちましょう。…私と来て頂きましょうか』
奪われた、魔物の王に。ルシオは玉座の肘掛けを握り締める。サントハイム王が守らなければならない者達を。
『我が城にお招き致します。其処で私に夢を語って頂きますよ、王。貴方の視る、未来の夢を』
この身に宿っていた、予知夢の為に奪われた。俺が最も手放してはならない存在を。
荒い息を吐きながら、ルシオは汗ばむ額に手を添えた。
浅縹の長い髪が脳裏で揺れる。
あいつが居ない未来なんて、要るのか?
「う……、うあああっ!」
その瞬間、ルシオの魔力が爆ぜた。


7 声を失う

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プロフィール

阿月さくら

Author:阿月さくら
ドラクエ4のサントハイムを中心とした二次小説を書いています。
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