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ドラゴンクエスト4のクリフト×アリーナ(クリアリ)を中心とした二次創作サイトです。
5 唯一人の為
玉座へと続く扉を後ろ手で閉めた後、教父は集まった神騎兵達を見回した。
誉れある第一部隊の騎兵達は、皆一様に恐怖を押し殺した表情を浮かべている。
よく逃げ出さなかったものだ。彼等の度胸に感心しながらもパリスは努めて冷静さを装った。
「賊の数は?」
「一名。ですがとてつもない力を持っており…、我らが束となっても敵わず」
当然だろう、相手は魔族の王だ。
「…幼子や年老いた親が居る者は?」
「パリス様のお申し付け通り、その者達には城内に残る弱者を出来る限り連れて早急に城から離れるよう説得したのですが」
弱り顔の神騎兵長の様子にパリスの笑みが零れる。
「私の命令に逆らったのですね?」
「…はい。申し訳ございません、皆最後まで王や教父様と共にありたいと」
「困った人達ですね。……嗚呼、もう時間切れのようですよ」
教父の視線を追った神騎兵達は顔に緊張を張りつかせ、武器を構えた。
「……ふふっ、お前は何もかも承知のようだな?」
銀糸の髪と漆黒を纏いし出で立ち、麗しき笑みを浮かべたこの男が、ルシオが視た魔族の王デスピサロなのだろう。
冷たい血色の瞳はパリスを値踏みするように見つめる。
「お前は私に勝てない事を知っていながら、私の前に立っている。立派な覚悟だ。だが残念ながら恐怖のあまり足が震えている」
「きょ、教父様を愚弄するか!」
叫ぶ神騎兵長を諫めるように制し、パリスは胸の聖十字に触れた。神よ、ルシオ様を御守り下さいと祈る、自然と足の震えが止まった。
「私はサントハイム神教の教父パリス。魔族の王デスピサロ、私は王が望む未来を守る」
「…名も知っているのか、光栄だ」
慈愛と称えられた微笑を消し、パリスはデスピサロをじっと睨みつける。
「此処で我等が倒れようとあなたに安息の場所は無い。神は決してあなたを赦しはしない」
デスピサロは楽しそうにくすりと嗤った。
「…パリス。此処に来るまでに何度か聞いた名だ。王が最も信頼し心を許す教父パリス。お前の命が危険に晒されれば王は傀儡となるやも知れぬ」
…傀儡。あの人が私の命を守る為に世界の未来を差し出すと?パリスは怒りに震える拳を握る。
そんな真似は決してさせない。
あの人は自信が無いと言ったが、最後まで諦めない。
「私如きの命で?随分と我らが王を莫迦にしている。王が一人の命と世界を天秤にかける等ある筈も無い」
だがもし最後の最後、どうにもならない事態となったなら。
どちらか一つ選ばざるを得ない事態となったならば。
あの人に酷な選択を強いる事は出来ない。私は自ら命を棄て、あの人の選択肢を一つにする。
愛していると言ってくれたあの人から永遠に恨まれる事となっても。
「…莫迦はお前だ、教父パリス」
血色の瞳を歪め、怒りを露わとしたデスピサロにパリスは息を飲む。
「どういう…意味」
自分の言葉の何かがこの魔族の心に触れた。
それはこの魔族の弱さ、だがそれを隠す為に態と怒りの感情を身に纏って見せた。
「サントハイム王は神の子ではない、望まない力を持つ人の子だ。世界の為に動く事等無い、動く時は己の目に見えるものの為だ。人間も魔族も、目の前のものにしか手を伸ばす事は出来ない」
目の前のものにしか手を伸ばす事は出来ない。
人間も。
その通りだ、人は目の前の存在の為に非道な決断を下す事もある。
…魔族、も?
パリスは僅かに眉を顰める。
この冷酷なる魔族の王は自身にも守るべきものがあると言うのか?
「デスピサロ、では、あなたは何の為に戦っている…?」
「……」
デスピサロは無言のまま右手にある黒塗りの太刀を振るう。パリスの周囲に居た神騎兵達が剣や盾で応戦するもあっさりとはじき返された。
パリスはその間に唱えていた最高位疾風魔法の力を発動させる。
唸りを上げる風は刃となってデスピサロを襲うが、再び振るわれた太刀で霧散した。
サントハイム王の右腕であろうが、所詮は人間、時間稼ぎにもならない。デスピサロは顔を歪めるパリスの喉を素早く右手で捉えるとその勢いのまま大扉に身体を押し付ける。
「中々良い質問だ。土産に答えてやろう」
呼吸が出来ずもがくパリスを静かに見下ろしながら、デスピサロは手にある黒い宝玉を持ち上げた。
「私は唯一人の命の為に世界に仇を成す」


・・・6 魔王の城

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阿月さくら

Author:阿月さくら
ドラクエ4のサントハイムを中心とした二次小説を書いています。
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