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ドラゴンクエスト4のクリフト×アリーナ(クリアリ)を中心とした二次創作サイトです。
1 罪深き人間
「おい、サントハイム王!夢のお告げはまだなのか?!」
連日のようにやって来る魔物達にルシオはうんざりとした表情で溜息を吐いた。巨大な棍棒と舌を持つ魔物は今にもルシオに噛み付きそうだ。
「デスピサロ様がお待ちなんだぞ!」
「お待ちだろうとなんだろうと、俺は何かの道具で未来を予知する訳じゃない、眠った時に偶然予知夢を視る事で未来の可能性を垣間見る。急いだ所でどうにもならない」
少しも恐れた様子を見せないルシオの言葉に魔物は牙を剥く。
「生意気な人間の王め…!その煩い喉を掻き裂けば静かになるか…!!」
「予知夢を諦めるなら、それも一つの選択だな」
そのような事をデスピサロが許しはしないとは思うが。解っているルシオはニヤニヤしながら魔物達の醜悪な顔を順に見る。表情とは裏腹な焦りを抱えた心を落ち着かせ、状況を分析する。
とは言え、何時までもこのままという訳には行かないだろう。俺が役に立たないと奴が判断すれば、俺は勿論、あの黒宝玉の中に在るパリス達の命も危うい。
彼等に有益な情報は与えねばならないだろう。
今ある、有益な情報は……、勇者の夢。魔族の王を滅ぼす勇者を魔物達は探している。
勇者の居場所を伝えれば、間も無くあの小さな里は戦火で滅び去る。
そして勇者は死に、世界の希望は失せる。
「小賢しい人間の王よ、今日はお前が喜ぶ者を連れて来た」
にたりと笑う魔物を胡散臭げな瞳でルシオは見返した。
「俺は相当な美女じゃないと喜ばんぞ?」
ルシオの軽口を無視した魔物は背後に居る魔物に合図した。棍棒の魔物の後ろから現れた一つ目の屈強な魔物は、右手に持っていたものをルシオに向かって投げた。
「……ルシオ、様」
己の足元で蹲るそれにルシオは目を丸くする。
浅縹(あさはなだ)の長髪、女性と見紛う容姿。ゆるりと纏う新緑のローブには要職にある者だけが帯びる事を許されるサントハイムの紋章の刺繍が施されている。
「パリス…?!良かった、無事だったか!」
嬉しそうに駆け寄ったルシオはパリスの肩を掴み、顔を見つめた。
「ルシオ様……」
パリスの唇から零れる己の名を聞くルシオの背に戦慄が走る。
「……おい、ふざけんな」
ルシオは忌々し気に手を離すとパリスに背を向けた。
「お前はパリスじゃない。姿形は本物そっくりだが、あいつの緑瞳にそんな泥沼のような濁りは無い」
パリスの偽物は悲しそうに顔を歪める。
「ルシオ様、助けて」
「諄いぞ、魔物め!選りにも選ってパリスに化けやがって!」
振り返ったルシオの目の前で、パリスの偽物の胸は魔物達の武器で貫かれた。
「なっ……!」
絶句するも目は離せない。その胸から流れる紫の血はこの者がパリスでない証拠ではあったが、その姿は何処までも瓜二つ。
「ルシオ…様」
恐怖と痛みに顔を歪めながら名を呼ばれ、震える指先を伸ばされれば手を取りたくなる。
「サントハイム王。これは我らが王の警告だ」
汚い手を。ルシオは拳を握る。だが、最も効果的だ。
俺はきっと無様な程に青褪めている。あいつを失う事を恐れていると見抜かれたに違いない。
いや、とっくに見抜かれていたからこそ、こんな真似をして見せたに違いない。
妖艶なる魔王デスピサロ。人の醜さと愚かさを嫌悪する奴は、人間よりも人間の事を解っているのかも知れない。
城の者達全員を人質にした理由が漸く解った。
奴は最初からパリスさえ居れば俺を従えられる事を知っていたんだ。
だが、パリス一人を攫えば、パリスは自ら自分の命を絶つ。俺の足枷になる位ならと、俺が望む、この世界の未来を守る為ならと、『ルシオの友人パリス』は躊躇う事無く笑って己を切り捨てる。
そうなれば俺は奴らの為に未来など視ない、否、視る事は出来なくなるだろう。
それを阻止する為にパリスを慕う城の者達まで攫ったのだ。恐怖する彼等の心を『教父パリス』は見棄てる事等出来ないから。
「……くそっ」
荒い息を吐き続けているパリスに化けた魔物を見下ろしたまま、ルシオは舌打ちをした。
もし、これが本物のパリスだったら?
愛していると言ってくれた、お前も愛され必要とされていると俺に未来を与えてくれたパリスだったら?
嗚呼、考えただけで吐き気がする。
どんな力を持っていようと、どんな肩書きであろうと。
俺は……大切な存在を守る為ならその他の犠牲を払う、罪深き人間の一人だから。
「……お前達の王に伝えろ。この数日の間に必ず勇者の居場所を突き止める。だから…、城の者達には手を出さないでくれ」


・・・2 勇者を守る術

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プロフィール

阿月さくら

Author:阿月さくら
ドラクエ4のサントハイムを中心とした二次小説を書いています。
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