ドラゴンクエスト4のクリフト×アリーナ(クリアリ)を中心とした二次創作サイトです。
魔物達が部屋から立ち去るとルシオはパリスの偽物の側に座った。ぴくりぴくりと四肢が痙攣している、長くは無いだろう。
「悪かったな…、痛みを和らげてやりたいが、俺は回復系の呪文は覚えていないんだ。お前が化けて見せたパリスが…使えるからな」
ルシオの呟きに反応したかのようにその姿は揺らめき、小さな黄白の炎と化す。
「それがお前の本当の姿か。こうなると解かっていたお前は俺に助けを乞うたのにな」
風が吹き消したかのように炎が消えるとルシオは息を吐いて立ち上がった。身体が酷く重く感じた。
パリスに化けた魔物が操ったのは、恐らく、写し身の魔法モシャス。黴臭い書物の中で存在のみが伝わる、人の世では既に失われた古代魔法の一つ。
あれほどまでにそっくりに変化されると余程でなければ区別は付かないだろう。
…そう云えば…、夢の中のあのエルフも使える様になったと喜んでいたな。
モシャス……。
上手くいけば……、もしかしたら。
仲睦まじく語っていたエルフと青年の姿を思い出し、ルシオは頭を振った。
「そんな酷い真似をさせるのかよ。……最低だな、ルシオ」
だが、それしか勇者を守る術がないとしたら?
嗚呼…、夢の中か。ルシオは冴えない頭で周囲を見つめる。
長閑な森。人を拒む森は深く、神聖な色を保つ。
「…歌声」
微かに聞こえる、歌。呼ばれるようにルシオは歩く。
古代語だ、魔法使いでも理解するのは困難な古代語で歌っている。
ルシオはふと足元の草に目を向けた。ジギタリス。この草が自生するのはブランカのみだった筈だ。
「…ブランカなのか、此処は」
ブランカと隣接するバトランドは、何年も前から勇者を探していると聞いている。彼等の目と鼻の先で守られていたとは。
歌声が近くなってきた。
一体、何者だろうか?
だが、答えは直ぐに解った。
エルフ。長寿で知られる森の民は、清らかな声で歌っている。
歌うエルフには届かないと解りつつルシオは声をかけた。
「綺麗な歌声だ」
エルフは弾かれた様に振り返る。間違いない、あの小さな村に居たエルフ。見つめるルシオの瞳に怯える様にエルフは瞳を揺らす。
「貴方は…誰?」
見えている!!ルシオは驚きを隠せない表情でエルフを見返した。
こんな事は初めてだ、夢の中で誰かに姿を認められる事等。
エルフは無言のままのルシオに更に瞳を怯えさせるも勇気を振り絞って言葉を紡いだ。
「貴方は誰なのでしょう?あの…私の声は聞こえますか?」
「…聞こえている」
返すルシオにエルフはほっとした表情を浮かべる。
「あの…、これ以上この森には入らないで頂けませんか?私は貴方に危害を加えたくはないのです」
「…里に隠れる勇者に近づけたくないから?」
「!!」
可哀想な位に顔を青褪めさせるエルフを安心させるようにルシオは微笑み、胸に手を当てた。
「俺は西の大陸サントハイムの王。未来の幾許かを夢の形で垣間視る力を持つ。人は俺を予言王とも呼ぶ」
「サントハイムの予言王様…」
復唱するエルフにルシオは頷く。
「俺は今、国の者を人質に取られ、魔物共の為に予知夢を紡ぐ羽目になっている」
エルフはさっと顔を青褪めさせた。
「魔物に…!何という事でしょう。御労しい…、予言王様」
この世界は未来なのだろうか?判らない。この森は時と場所を狂わせる、不可思議な力で守られている。
だが、まだあの未来が始まっていない事は間違いない。
あの戦火で助けを乞うた未来をこのエルフは知らない。
「では…里の事は魔物に知られて…?」
「いや。恐らく奴等はまだ知らない」
ルシオの言葉にエルフは安堵の息を吐く。
「だが、時間の問題だ。俺はこの世界を守りたい、俺が視た未来を先にお前へ伝えよう」
・・・3 身代わり
「悪かったな…、痛みを和らげてやりたいが、俺は回復系の呪文は覚えていないんだ。お前が化けて見せたパリスが…使えるからな」
ルシオの呟きに反応したかのようにその姿は揺らめき、小さな黄白の炎と化す。
「それがお前の本当の姿か。こうなると解かっていたお前は俺に助けを乞うたのにな」
風が吹き消したかのように炎が消えるとルシオは息を吐いて立ち上がった。身体が酷く重く感じた。
パリスに化けた魔物が操ったのは、恐らく、写し身の魔法モシャス。黴臭い書物の中で存在のみが伝わる、人の世では既に失われた古代魔法の一つ。
あれほどまでにそっくりに変化されると余程でなければ区別は付かないだろう。
…そう云えば…、夢の中のあのエルフも使える様になったと喜んでいたな。
モシャス……。
上手くいけば……、もしかしたら。
仲睦まじく語っていたエルフと青年の姿を思い出し、ルシオは頭を振った。
「そんな酷い真似をさせるのかよ。……最低だな、ルシオ」
だが、それしか勇者を守る術がないとしたら?
嗚呼…、夢の中か。ルシオは冴えない頭で周囲を見つめる。
長閑な森。人を拒む森は深く、神聖な色を保つ。
「…歌声」
微かに聞こえる、歌。呼ばれるようにルシオは歩く。
古代語だ、魔法使いでも理解するのは困難な古代語で歌っている。
ルシオはふと足元の草に目を向けた。ジギタリス。この草が自生するのはブランカのみだった筈だ。
「…ブランカなのか、此処は」
ブランカと隣接するバトランドは、何年も前から勇者を探していると聞いている。彼等の目と鼻の先で守られていたとは。
歌声が近くなってきた。
一体、何者だろうか?
だが、答えは直ぐに解った。
エルフ。長寿で知られる森の民は、清らかな声で歌っている。
歌うエルフには届かないと解りつつルシオは声をかけた。
「綺麗な歌声だ」
エルフは弾かれた様に振り返る。間違いない、あの小さな村に居たエルフ。見つめるルシオの瞳に怯える様にエルフは瞳を揺らす。
「貴方は…誰?」
見えている!!ルシオは驚きを隠せない表情でエルフを見返した。
こんな事は初めてだ、夢の中で誰かに姿を認められる事等。
エルフは無言のままのルシオに更に瞳を怯えさせるも勇気を振り絞って言葉を紡いだ。
「貴方は誰なのでしょう?あの…私の声は聞こえますか?」
「…聞こえている」
返すルシオにエルフはほっとした表情を浮かべる。
「あの…、これ以上この森には入らないで頂けませんか?私は貴方に危害を加えたくはないのです」
「…里に隠れる勇者に近づけたくないから?」
「!!」
可哀想な位に顔を青褪めさせるエルフを安心させるようにルシオは微笑み、胸に手を当てた。
「俺は西の大陸サントハイムの王。未来の幾許かを夢の形で垣間視る力を持つ。人は俺を予言王とも呼ぶ」
「サントハイムの予言王様…」
復唱するエルフにルシオは頷く。
「俺は今、国の者を人質に取られ、魔物共の為に予知夢を紡ぐ羽目になっている」
エルフはさっと顔を青褪めさせた。
「魔物に…!何という事でしょう。御労しい…、予言王様」
この世界は未来なのだろうか?判らない。この森は時と場所を狂わせる、不可思議な力で守られている。
だが、まだあの未来が始まっていない事は間違いない。
あの戦火で助けを乞うた未来をこのエルフは知らない。
「では…里の事は魔物に知られて…?」
「いや。恐らく奴等はまだ知らない」
ルシオの言葉にエルフは安堵の息を吐く。
「だが、時間の問題だ。俺はこの世界を守りたい、俺が視た未来を先にお前へ伝えよう」
・・・3 身代わり
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