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ドラゴンクエスト4のクリフト×アリーナ(クリアリ)を中心とした二次創作サイトです。
1 王と教父と、異国の娘
「今日を入れて、あと七日か。月日が経つのは早いな」
此処はサントハイム王ルシオの執務室。
城内警備の報告書を読み終え、温かな茶を飲んでいたルシオが呟くと同じく執務室で本の整理をしていたパリスは振り返り、微笑んだ。
「ええ、本当に」
ルシオが王となってまだ日が浅い。
だが、奔放な王子であった筈の彼はそのなりを潜め、早くも王としての貫禄と資質を内外に示している。
サントハイムの予言王。畏敬の念を込めそう呼ばれる彼は、この異名と共にサントハイムを背負う。
それは彼が望んだ事なのか。
そうならざるを得なかったのか。
パリスには解らない。だが、ルシオが望むなら喜んでこの手を差し伸べようと思う。
サントハイム王の兄弟位、サントハイム教父として。
ルシオの一番の友人として。
「アリシアは?」
何気無いルシオの質問だが、パリスはじとりと睨む。
アリシアとは、ルシオが愛してやまない婚約者の事である。
遠い異国の地から輿入れする事を了承してくれた婚約者が何をしているのか気になるのは当然だろう。
だが、ひと息毎に尋ねられる此方としてはたまったものでは無い。
「私はずっと貴方と一緒に仕事をしているのですよ?判る筈がないでしょう!」
パリスは不機嫌な様子を露わとするも、その様子に気付いていないルシオは物憂げな溜息を吐く。
「一人で心細い思いをしていないかな?」
「一人になれる時間があれば息つく暇もあるでしょうけど、アリシア様は貴方以上に婚礼の準備が御座います」
「まあ、そうだよなぁ。サントハイムに来たばっかりなんだ、頭の採寸だってイチからしなきゃならないんだもんな」
「そうですよ」
やっと理解したかと言わんばかりの様子でルシオから茶器を取り上げたパリスは、かわりに次の報告書を押し付けた。
「さっさと読んで、押印を!」
「…そんなに妬くなよ、パリス」
王印を手に取りながら呟くルシオを見つめながら、パリスはヒクリと口元を引き攣らせる。
「誰が誰に妬いていると仰るのです?」
「冗談だって。何でそんなに怒るんだよ、お前は」
「別に?!」
「変な奴」
明らかに不機嫌なパリスに苦笑しつつ、ルシオは大きな音で印を押した。


「ルシオ」
夕方。
本日の業務を終えたルシオを労わるように現れたアリシアは愛らしい笑みを浮かべた。
「アリシア、来てくれたのか!」
嬉しそうな笑顔で駆け寄ったルシオは、アリシアの身体を軽く抱き寄せる。
「疲れが一気に吹き飛ぶよ!」
「ふふっ、私もよ。…パリスもルシオのお相手、お疲れ様」
アリシアのお茶の準備を始めているパリスは小さく苦笑した。
「ええ、それはもう疲れましたよ」
「どう言う意味だ」
むくれるルシオを見上げて笑っているアリシアにパリスは何気無く質問をした。
「本日、アリシア様は如何御過ごしでいらっしゃいましたか?」
「採寸と…、お勉強です」
アリシアは僅かに瞳を揺らす。
ルシオの妻の座を狙っていた貴族の娘達は、その心を奪った異国の娘アリシアへの嫉妬から、行儀作法に殊更厳しく接している。
言えばルシオに心配を掛けてしまうだけ。それよりも元ガーデンブルグ王女の誇りにかけて(最もこれはガーデンブルグ王家と交わしたサントハイムに来る交換条件であり公言出来ないのだが)、誰にも何も言わせない位の物を身に付けたいとアリシアは思っている。
だが、所変われば何とやら。現実はなかなか上手く行かないもので。
「…アリシア様?」
アリシアの表情が僅かに曇った事に気付いたパリスが探るように瞳をじっと見つめている。アリシアは慌てて両手を振った。
「…あ、ごめんなさい!少し疲れたのかしら。…この国のお作法も早く覚えないとルシオに恥を掻かせてしまうから、夢中になっていて」
「…私はアリシア様が恥ずかしい思いをなさるのでは無いかと心配です。ルシオ様は行儀作法は苦手でして」
パリスが大袈裟に溜息を吐くとアリシアはまた笑い声を上げた。ルシオはじろりとパリスを睨む。
「いい加減にしろよー?」
「ふふっ、すみません。……そうそう。作法と言えば、明日は御式の練習を致します。一連の流れを思い出しておいて下さいね」
「流れねぇ。祭壇まで何歩で歩くとか、細かいんだよなぁ」
「足回りが厳しいドレス姿のアリシア様に合わせる為です。歩数が少なくなれば、アリシア様は急いで歩かねばならず、転んでしまうかも知れません。愛しい花嫁の為に歩数が決められているのは当然でしょう?」
「アリシアの為か」
ルシオはふむと頷く。
「ならば当然だな」
即答するルシオにパリスは微笑んだ。
簡単、明瞭な頭脳だ。
「あの……、誓いの……」
「え?…ああ、誓いの言葉ですか?勿論、言って頂きますよ?」
恥ずかしそうに小さな声で質問するアリシアに答えたものの、まだ弱った顔のままの様子にパリスは首を傾げる。
パリスの猛特訓で、二人は既にばっちり覚えている筈だ。
「其処は乙女心を読めよ、誓いの口づけをするのかって聞いているに決まっているだろ!」
ルシオの明け透けな言葉にアリシアは頬を赤らめさせる。パリスは狼狽えた声を上げた。
「あ、貴方こそ、乙女心を読んで下さいよ!……ええと、まあ…、其処は真似だけでも結構ですから」
アリシアはほっとした表情を浮かべながら頷く。が、未来の夫がそれに待ったをかけた。
「其処も本番通りにするべきだ!本番で緊張すると大変だからな!」


・・・「サントハイム王と教父の苦難の七日間  2 いつもしているキス」に続きます。

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Author:阿月さくら
ドラクエ4のサントハイムを中心とした二次小説を書いています。
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