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ドラゴンクエスト4のクリフト×アリーナ(クリアリ)を中心とした二次創作サイトです。
8 疑惑を招いた本当の台詞
いよいよ明日はルシオとアリシアの婚礼の日である。

「噂を放置しておくと決めたのは良いんだが」
王印を押し、可決の箱に放り込んだルシオは溜息を吐いた。テラスに繋がる窓から結婚式の準備て遽しくしている女官や神騎兵の姿を見ていたパリスが振り返る。
「大臣達も最近ニヤニヤ顔で俺に挨拶してくるしさ。この噂、もう城中で広まっている気がするんだけど」
この噂とは、ルシオとパリスの怪しい関係を示唆するものである。サントハイム王ルシオ様は公私共に一番近い存在である男のパリス教父と添い遂げられないから、偽装の結婚でも了承してくれるような異国の平民の娘を貴族院の了承無く迎える事にしたに違いない、と実しやかに広まる噂は、サントハイムで孤立していたアリシアへの同情も買っている。
アリシアの為、ルシオとパリスはこの誤解を解かないという結論を出した。噂はそう長続きしないし、切っ掛けは何にしろ、アリシアと接する者達の中にはアリシアの本当の友人となる者も現れるであろうから。
「…アリシア様は噂を御存知なのでしょうか?」
パリスの尤もな疑問にルシオは唸る。
「それがさ、良く解らないんだよ。本当に知らないのか、知らない振りをしているのか」
「…彼女の耳に入らないよう貴族の娘達も気を遣っている可能性はありますよね」
「うん。もし万が一、アリシアが噂を鵜呑みにしたら、俺はアリシアに俺の愛を信じて欲しいと誠心誠意訴えようと思っている」
「そうですね」
パリスが頷いた瞬間、開かれた扉から遠慮がちに覗き込むアリシアの姿が見えた。
「アリシア!」
ルシオが嬉しそうに声を掛けるもアリシアは気まずい様子を見せる。
「二人のお邪魔だったかしら?」
そのまるで噂を真に受けているから発せられたような台詞に二人はぎくりと固まった。
「な、何を言っているんだよ。俺はアリシア第一なんだぜ、こんな皮肉屋の男よりも!」
ルシオの辛辣な言葉にパリスは無言のままじろりと睨む。
「…あのね、ルシオ、パリス」
アリシアは扉をきちんと閉めた後、真剣な表情で二人を交互に見返した。
「ある噂が流れているんだけど…知ってる?」
「ある噂って?…何?」
ルシオが取り敢えず知らない振りをすると、アリシアは少し考え込んだ後再び口を開いた。
「あなたとパリスの噂よ。二人が、その……恋人関係にあるという噂」
…知っている。二人はさっと目配せした後、今度はパリスが口を開いた。
「アリシア様。あくまでも噂です、私共にそのような関係性が無い事はアリシア様も御存じの筈です。宮廷の噂など季節と共に移ろいます、捨置いて頂ければ良いのですよ。どうかアリシア様はルシオ様の愛を信じて明日の結婚式に望んで頂ければ」
「そうじゃないの!ルシオの愛情を疑っている訳では無いわ」
アリシアの剣幕にパリスは驚いた表情のまま口を噤む。
「そんな噂で気懸りとなるのはアリシアが真に受けないかどうか、その程度だ。アリシアが信じてくれているなら、俺はどうこう言うつもりは無い」
本当は一番この噂に騒いでいたルシオであったが、アリシアの手前寛容な男を演じた。パリスは何も言わないが、物言いたげな瞳をルシオに送る。
「…だ、だから、その」
アリシアは胸の上で手を組み、躊躇う様子を見せたものの、意を決したのか、大きく頷くと一気に吐き出した。
「わ、私のせいなの!」
「……と言うと?」
「あの噂!私の軽率な発言のせいなの!」
「……え」
瞳を瞬く二人にアリシアは「実は…」と切り出す。
「ほら、御式の練習をした日があったでしょう?あの時、側に居た貴族の女性とお話をしていたんだけど」
ルシオは頷いた。覚えている、アリシアの衣装直しで式の練習が一時中断され、パリスとどうでも良い話や真面目な話をしたりしていた時だ。
「あの時…私ね、貴方達を見ながら『あの二人の時間を私は決して邪魔をしてはならないと思うの。二人は結婚出来ないけど…、私には踏み込めない、結婚と同等以上の絆があるから』って言ったの。二人は友情という言葉では表現出来ないくらい深い絆があるって事を言ったつもりだったんだけど……、その後皆様と話をしている内に少し違った意味で捉えられている事が判って」
「じゃ、じゃあ」
ルシオはわなわなと手を震えさせながら呟いた。
「俺の『女ならパリスを妻に』発言を聞かれた事が原因では無かったという事か?!」
気に病んで損した!ほっと息を吐くルシオの胸倉をパリスは掴んだ。
「そのつまらない冗談を誰かが聞いていたかも、なんて仰いませんでしたよね?!」
「お前っ、だ、誰の胸倉を掴んでいやがるっ!」
「おかしいと思ったんですよ!原因に心当たりがあるかと尋ねた時、急にその話を止めると仰ったから!」
「だって、聖堂に女達が押し掛けた原因が俺にあるとしたら、お前、俺にどんな嫌味を連発する事か!」
「聖堂に女性が…?そ、そんな大事に?」
不安そうにするアリシアを見たパリスはこの話をこれ以上続けるのは拙いとルシオの手を離す。
「い、いえ、それは…直ぐに解決したので」
「…ごめんなさいね、二人共」
「……なあ、アリシア」
襟元を正しながら、ルシオは今回の噂の駄目押しをした犯人を振り返った。
「何?」
「サントハイムに来て、後悔していないのか?」
「後悔?」
アリシアは真剣な瞳で自分を見つめている二人を見返しながら瞳を瞬かせた後、愛らしい笑みを浮かべる。
「全然後悔なんてしていないわ。サントハイムには愛する人と」
そう言いながらルシオの手を取り、
「大切な友人」
もう片方の手でパリスの手を取った。
「私を迎えてくれた人々が生きる国ですもの」
アリシアに手を繋がれたまま、呆然と彼女を見つめていた二人だが、くすくすと笑い声を上げる。
「有難う御座います、アリシア様」
パリスは綺麗な微笑を浮かべた。

ルシオの愛のみを頼りにサントハイムへの輿入れを決断した、この心優しい異国の娘が疑っていないのならば。
私は。

ルシオは手を伸ばし、アリシアの頬を撫で、囁く。
「愛しているよ、アリシア」

此処に来て良かったと笑う彼女がサントハイムで幸せな時間を得られるのならば。
俺は。

どんな事でもしてみせよう。


翌日。
サントハイム王ルシオと妃アリシアの婚礼の儀は無事に執り行われた。
この上なく幸せそうに笑う王妃アリシアに頬を緩ませる国王ルシオと教父パリスの姿が印象的だったという。


end.



お盆休み中、毎日連載してみました、サントハイム王と教父のスピンオフ中編「王と教父の苦難の七日間」は以上で終了となります。

アリシア様をしっかりと書けたので、個人的には満足です。
スピンオフでしたが、皆様に楽しんでいただけていたら幸いです。



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阿月さくら

Author:阿月さくら
ドラクエ4のサントハイムを中心とした二次小説を書いています。
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